かくて蜂巣に至るまで

小峰蓮（こみね・れん）は、弱冠16歳にして国一の劇場・「雲上座」のトップを務める、いわゆる花形俳優だった。しかし、親友でありライバルでもあった少年俳優・「浅香桜（あさか・さくら）」の死を受け、突如雲上座を去る。
蓮の心には、「自分自身に価値を見出せないから、せめて人の役に立っていたい」と懸命に働き、その結果衰弱していった親友の姿が、焼きついて離れなかった。その思いはやがて、桜を死に追いやった環境への、深い怒りに変わっていく。
「誰にでも、優しい奴だった」「いつだって誰かを救おうとして」「でも誰も、あいつを救っちゃくれなかった。……僕もね」
雲上座を離れ、演劇からすら離れ、ひたすらに喪失感と燻る瞋恚を抱え続ける蓮。
やがて彼は様々な奇縁を結び、「桜を奪ったすべて」に、その矛を届かせることになる－－