カクヨム短歌賞1首部門 応募作品

日没廻廊

カクヨム短歌賞1首部門 応募作品

航空券を握らせて身投げする人をもっと遠くに飛ばしたい


山手線が煤けたビルの背に挟まれて走る街の影を集めて


嫌いだからあなたを認識できる言葉がなくなればいいのに


行かないと伝えた電話越し折った膝からジャージを引き抜く


燃える街つながる影についていく私が消える未来の夢ね


真昼の農場土を踏む青いパンプスはただ彼女のために


上り電車の風が強いからヒマワリはずっとホームを見ている


どうもどうもと去った父ありがとうはほこりと一緒に溜めている


七日前の日付が最後のメッセージ幻はやけに優しい


理解するのは諦めてあなたの口にほぶねを乗せて笑っています


どれも当てはまらないと諦めたのに動きそうな日傘の口元


わたしたちが同じステップで歩いたからきれいに乾いた血の跡


会社を去る彼女の引き締まった手の甲についてはたずねなかった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カクヨム短歌賞1首部門 応募作品 日没廻廊 @TAK-C

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画