日常に潜む色彩を短歌で拾い集める、温かな眼差しの作品
- ★★★ Excellent!!!
「夏を描く白さに長けるオレンジで」という冒頭から、もう心を掴まれた。
画用紙の中でぐるぐると塗り広がる色の世界に、子どもの頃の自分を重ねてしまう。
この作品の魅力は、見過ごしがちな日常の瞬間に光を当てる視点の確かさにある。
「いつだって 見える景色に 色はつきもの」という一首に、作者の世界への愛情を感じる。
「あめんぼが 凪いだ水面に 雨を魅せ」では、小さな生き物と雨粒の織りなす詩的な瞬間が見事に切り取られている。
窓の向こうの風景への想像が、読み手の心に優しく響いてくる。
私もまた、こうした何気ない美しさに気づく目を持ち続けていたいと思った。