この連作を読み進めていくうちに、心が次第に引き込まれていった。
「背徳の蜜 抗いて」という歌で、何となく心がざわつき始める。
叶わない想いの甘さと苦さを、こんな風に表現するのかと思った。
「重ならない 常に僕らは すれ違い」
の歌で、深いため息をついてしまった。
どんなに想っても届かない距離感が、痛いほど伝わってくる。
「はしゃいだ僕の赤面メール」
という表現には、思わず微笑んでしまった。
文字を打ちながら赤面している姿が浮かんで、なんだか愛おしくなる。
そして最後の
「君がため 惜しからざりし 玉の緒の」
で、この現代の恋が千年前の恋と同じ深さを持つことを知った。
遠い日の想いが私の頬を撫でていくのを感じた。
冒頭より、タイトルにもご使用されている「割り切れない僕ら」という言葉に引き込まれてしまいました。一瞬、口語体な現代短歌を予測しましたが、全編を通して筆者様らしい古典的な文語体もお使いになられ、そこに響く「美しきしらべ」が奏でられております。
特筆すべき点は間違いなくその「韻律」の美しさに帰結します。
勿論、詠まれている内容も素晴らしいです。
私は言葉のリズムというのは、句またがりや字余りを起そうが、そこにある「響き」という感覚で知覚します。言葉を脳内でどのように捉えるのか、これは個人個人での相違はあるかもしれません。私はこの辺りの感覚が「筆者様はずば抜けて素晴らしい」と思っています。
◇その言葉のひとつひとつが、丁寧に磨き抜かれた優しい輝きを放つ翡翠の様に、私には強く感じられるのです。
冒頭1首より、その韻律の美しさを放ったこちらの10首、2首目より確固とした定型感覚とこれでもかの韻律がお手本の様に詠まれております。流れる水の如く、一切の破綻や不安を感じさせない美しさです。
その内容についてはネタバレになるのでここには書けませんが、10首とは何か、どのようなまとまりを持たせるのか。しっかりと練り込まれ並べられたであろう歌は、その美しくも強い流れに一気に引き込まれてしまいます。
お勧め致します。
短歌とは、自我意識を鮮烈に詠う抒情性にその魅力が存在します。気をつけねばならないのはありきたりで派手な言葉を使い過ぎると、一度読めばもう十分な大喜利の様になってしまう事です。ですがこちらの10首は何度も噛みしめて読む事が可能な、普遍性の獲得に至っていると私は思います。どうぞ、繰り返しご堪能下さいませ。
皆様、是非、宜しくお願い致します( ;∀;)