恐竜カードコレクト

Veroki-Kika

第1話 ヴェロキラプトル

「ここが…」

朝の港に、1人の少年が立っていた。

袖がブワッとしたTシャツに、ベージュ色のズボン。目は片目だけ黒い。髪にも同じようなメッシュが入っていた。更に白いコートを羽織っている。

金色の星型ネックレスが、キラキラと海に反射して光っていた。

朝霧の中、少年はカードケースを取り出す。

じっとそれを見つめた後、そのまま歩き出した。

白いコートについたフードを深く下げ。

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パンっ!

朝、富士宮中学校では、部活動が行われていた。

「7.99!」

タイムキーパーの声が響き、走ってきた藤宮瑞希は倒れ込む。

「約8秒…。中々タイム伸びないな…」

瑞希は富士宮中学校の2年生。陸上部に入っていた。

「6.78!」

「やったぁぁぁっ!昨日よりも1秒速くなってる!」

そう言ってガッツポーズをしたのは、同じ陸上部の赤田眞子。

2人はライバルだったが、最近瑞希のタイムは伸びなくなっていた。

差は広がる一方だ。

「みーずきっ!」

「眞子!」

「おつかれさまっ!今日も速かったね!」

眞子の言い方に、瑞稀はイラっとする。

自分よりも速い人間に言われると、侮辱にしか聞こえない。

「ま、まあね。眞子も速かったじゃん」

瑞希は手のひらを握りしめながらも笑顔でそう言った。

(いつか…いつかあたしも!眞子より速く走れたら…!)

そう思って、瑞希はまたレーンに立った。

------

学校が終わり、瑞希は走りながら坂を上がっていた。

(もっと!もっと速くなるために!眞子なんかに!負けたく無い!)

「ねえ、キミ」

「?」

誰かに声をかけられ、瑞希は振り返る。

そこには、長身で髪を一つに束ねた青年が立っていた。

(かっこいい人…)

黒い目。黒い髪。服には黒い星型の鍵のネックレス。

「速く走りたいのかい?」

「え、あ、まぁ…」

(あれ…なんだか…フワフワする…)

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夕方。眞子はいつものように走り込みをしていた。

1日20キロ。

昔は半日かかったのに、もう1時間程度で終わる。

「もっと!もっと!自分を鍛えるんだ!」

そんな思いでずっと走っていた。

(瑞希と…もっと一緒にいるために!)

瑞希は眞子の憧れだった。

風のように走っている。

瑞希と一緒に世界一に!

そんなことを考えていた。

------

次の日。

「瑞希!おはよっ!」

眞子が声をかけると、瑞希は眞子に突進してきた。

ものすごいスピード。

眞子は慌てて避けたが、刃物のように鋭い爪によって、眞子の腕から血が出た。

「瑞希…?どうしたの…?」

眞子が声をかけても、瑞希は狂気に満ちた目をしていた。

「ヴヴヴッ!」

瑞希は獣のような声を上げた。

「見つけた!」

眞子の前に、誰かが飛び込んできた。

1人の少年だ。片目が金色のオッドアイ。

ブカブカな袖にズボン。自分よりも背が低い。

「あ…あなたは…?」

「ぼくのことよりも自分のことを考えて。速く逃げて」

少年はそう言って眞子から目を逸らした。

「でもっ!

それじゃああなたが…」

「ここにいてもキミがまた怪我をする。ぼくのことはいい。それに、ここにいても邪魔だから、速く逃げてくれる?」

------

眞子が物陰に隠れた。

「お前の相手は…だ」

少年はそう言って自身のポケットから白紙のカードを取り出した。

瑞希はすごいスピードで突進してくる。

瑞希の爪を、少年は腕で受ける。

「あぁっ!」

すると、真っ赤な血があたりに飛び散った。

眞子が叫び声を上げる。

だが、少年は平気な顔。

瑞希はそのまますごいスピードで少年の服の裾を掴んだ。

そのまま星の鍵型ネックレスを引きちぎろうとする。

すると少年が叫んだ。

「いい加減にしろ!そんなことして楽しいか!?」

一瞬瑞希の動きが止まる。

「そ…んな…。あ…たし…走るのが…好き…で…」

瑞希の声だった。

目には光がかかっているが、薄く小さい。

少年は飛び跳ねて瑞希から距離を取るとたからかに叫んだ。

「我の力よ…光の道標を!」

少年はカードを投げる。

それがピカピカとひかり、さらに瑞希の指にはまっていた指輪も光出した。

「ߓߊ߲ߜ߭ߊ ߝߊߣߕߊ. ߦߋߟߋ߲ ߦߋ߫ ߌ ߕߊ ߦߋ߫.」

少年が何かをつぶやくと、星型の鍵のネックレスが光出す。

少年は顔を上げた。

星収集スターコレクト‼︎」

------

「瑞希!」

眞子が駆け寄ると、瑞希はへたり込んでいた。

「ま…こ…。ごめん!あたし、走る楽しさを忘れてた…こんなわたしに…走る資格があるわけない…」

泣きじゃくる瑞希を、眞子はそっと抱きしめた。

「いいの!だから…これからも一緒に走って!」

「まこ…」

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後者の陰。

そこには、恐竜の絵柄が描かれたカードを持つ少年がいた。

「ヴェロキラプトル」

少年がそう言ってカードを投げると、カードから小さな恐竜が出てくる。

ヴェロキラプトルだ。

少年はカードをカードケースに入れる。

「行こうか。ヴェロキ。キミの仲間を助けなきゃ」

少年はヴェロキラプトルをを肩に乗せ、歩き出した。

コートのフードを深く被り。

赤い夕日に、ネックレスがピカッと光った。


【ちょこっと恐竜博士!】

ヴェロキラプトル。ドロマエオサウルス科。全長1.8m。体重約16キロ。

主が1番好きな恐竜です。鉤爪がかっこいい。

群れで行動していたとかしていないとか。

モンゴルや中国出身。プロトケラトプスという恐竜と戦っているままの化石も見つかってる。

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