ツナ缶

遠野 歩

ツナ缶

階段をかけ上がるきみ、いつだって握りしめてる給水ボトル


おならして言い訳をして誤魔化して 「今日の夕食、ぼくが作るよ」


生ゴミを捨てる袋にわだかまり全部入れたしもうだいじょうぶ


風呂上がりクリーム塗るのにあっち向く妻の背中の大きいことよ


脇の毛も脛の毛だって自然だ、と何も剃らないを選択したひと


「坂道こそダンボール持つよ男だし」「いるだけでいい」と力こぶ見せるきみ


愛情の賞味期限はねばねばと歩みゆく日々が無効にしていく


ツナ缶で切った指を隠すための絆創膏は茶色が濃くて


チャーハンをかき込むきみの傍らで『ずっとこの日が続けばいいのに』


あかねさす日に染まりし一角で 団地の鳥は地平線をみる





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ツナ缶 遠野 歩 @tohno1980

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