曇間に射す月の光。騒めく白い花の慈悲。
- ★★★ Excellent!!!
曇天の宵。次第に強くなる風は、木々の
枝葉を揺らして行く。微かに雲の合間から
月が顔を覗かせるが、それもいつの間にか
隠れてしまう。
騒々と木々の葉を揺らしては耳に残る歓語
二人きりで暮らした家の、その庭は。
兄との思い出ばかりが蟠っている。
昏い庭の、兄を埋めた辺りに
いつの間にか、芽吹いた
マグノリアの花の、崇高な 白 が
雲間から射す朧月に騒々と揺れている。
「だから、お前は。」
そんな言葉も又、優しげに甘やかに響く。
何年もずっと待っていた。ずっと。
「だから、お前は。」
嬉しかった。
マグノリアが嗤っている。