スペル__令嬢転生、バッドエンドを回避

宮世 漱一

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…さて、俺は夢でも観ているのか?

なんでこんなにもベットがふかふかになんだ?

死角に見える金色の髪は誰のものなんだ?

動かなくてもわかる。これは動きずらい服だ。服?ドレスじゃないか?

夢にしてはリアルすぎるか…?

…一旦眠ろう。五秒で眠れるのが俺の特技じゃないか。

「…お、お嬢様。起きてください…」


は??誰だよこの子???え?


「!?は?!貴方誰ですの!?!?」


「あ、あわわ…わ、私のこと忘れてしまったんですか…??」


忘れるも何も今の俺が俺じゃねぇんだよ!!!!

はっきりわかった。これは夢じゃねぇ!!!俺転生したかもしれねぇ!!


「おおおお奥様を呼んできます!じっとしていてください!!!!」

「ちょっと!待ちなさい!」


…まてまて今の子は誰だ?いやそんなことより俺は誰だ?いや俺は俺。でもこの姿は俺じゃないはず。

「か、鏡」

部屋の端に置いてあったでかい鏡の目の前にはっきり立った。

「シャルロット…?」

わかった。俺はわかってしまった。目覚めてこの部屋を見渡して、見覚えがある気がした。メイド服を着た女の子のあたふたした表情、しぐさ、言葉、聴いたこと、いや。‪”‬見た事‪”‬があった。知らないというのは咄嗟にでた言葉だった。

極めつけはこの俺の容姿。間違いない。

俺が死ぬ直前に見た有名なロマンス令嬢系小説

「平民が雇われ先で溺愛ですって?」

の主人公の邪魔をする悪役令嬢、シャルロット・ミルドになってるじゃないかーーー!!!!!

…死ぬ前『死ぬ前最後、一番印象深く思い出したことが来世に響く』と言っていた婆ちゃんの話は本当だったのかよ。

あの時の赤信号フル無視トラック許さねぇ。

あー!!俺のキモオタ人生で終了で良かったじゃん!!なんで転生しちゃうのさ!!しかも悪役令嬢!!

主人公ハルネが可愛くてモテるからって嫉妬していじめるような器の小さい女だけど、俺はシャルロットの方がタイプ!!安心しろ!!俺が夫とラヴ×2になってやるんだから!!

まて…俺たしか最後、実の父親に斬殺されるよな?ハルネへのいじめのせいであるはずない噂立てられ結果夫にも捨てられた気が…

まぁこんな人生、捨てるにはもったいない。なんにせよ、殺されるのはごめんだぜ!!

ただ…【悲報】ワイ氏、夫に捨てられ実のパッパ刃物を向けられてしまう‍www

なんて言っている暇はないし…

とりあえず展開をどうにか変えていくしかねぇよな。俺の意思で動く事が可能なら、無理なことは無いはず。

まずは全体の好感度を図るところから始めよう。そして主人公と仲良くして夫ともイチャラヴしてやろう。

…てことは俺もしかして旦那様♡なんて言うんじゃねぇの…?想像したらキツ。というか正直ベタベタしたくねぇな。

「さぁ〜て。身支度始めますわぁ〜!」

ってこのドレス動きずら__

「い…!?!ったぶつけてしまいましたわ…」

躓いてドレッサーの角にぶつけた。

というか喋ると自動的にお嬢様言葉になる…

この格好は妙に動きずらくて、頭も…

「ってえ?血?」

やば。意識が。え?ここで死ぬのは想定外だからやめろ!!!!



____おはようございます。前,田中剛,現シャルロット・ミルド様

「は?俺死んだ?」

____一時的に気を失ってるだけですよ。そのうち覚めます。

「アンタはどこから話しかけてきてんの?」

____あなたの頭の中に語りかけています。

「というか、話すとお嬢様言葉になるから疲れるんだわ…」

____転生を一瞬で理解する人は珍しいですが…あなたは冷静で良かったです。

「やっぱ転生なのな。でアンタは誰だい?」

____私は…神に近い存在だと思ってください。

「アンタは神じゃないのな。そんな雰囲気あるのに。」

____ええ。本当の神はもっと暇人です。私に仕事を押し付けるんですから。人使いが荒いったらありゃしない。

____それでは…この世界のルールをいたします。お聴き下さい。

「ルール?そんなのあんの?」

____ええ。あなたは少し珍しいファンタジーの世界に転生した訳です。

「珍しいんだ」

____普通、新しい人間に生まれ変わるものですから。

「へぇ〜そんなことこれからを生きる俺に言っていい話なの?」

____まぁ…別にいいでしょう。

「軽いな」

____ゴホン。さて、あなたは『死亡ルート』を回避したいと強く思いましたよね。

「ああ。思ったね。ハルネと夫さんをデレデレにしてやろうともね。」

____では、そんなあなたへ神からの伝言を伝えます。

『剛さんよぉ。災難な死に方をしたようだな。そんな君にとっておきのプレゼントがあるんだ。その名も『スペルカード』

この小説、儂も読んだんだけど展開がまぁ多くて良い作品だった。君もそうだと思ったから、可哀想な剛さんはその悪役令嬢に転生させておいたぞ。これを使えば展開が起きる度に物語を様々な方向に進めることが出来る。アンタの意志をいい感じに移して話させるような仕組みだ。カードの種類は四種。ハート、スペード、ダイヤ、クローバーだ。上手く使えよ!!じゃ!!』

____とのことでした。

「え?カードの説明簡単じゃない?」

「というかカードって何。普通にシャルロットを生きるわけじゃない感じ?」

____神はそんなものですよ。適当に作って適当に壊す生き物です。ええと、説明不足でしょうから私から簡単にその他の説明を行わせて頂きます。

「お願いします。」

____まず、このカードはあなたが変えたいこの物語、この人生においてとても重要な役割があることは覚えておいてください。このスペルカード、原作小説で大きく描かれた展開の場面となった時現れます。出現時に私がお知らせ致します。なお、四枚のカードは一日に起きる展開につき四種類各一枚ずつしか使えません。午後0時になれば前日に使ったカードも新しく使うことが出来るということです。

「あーね。例えばハートを使ったとして、その日別の展開があるなら、その展開にはハートのカードが使えないって訳だ。でも四場面以上あったらどうするの?カードは二度使えない訳じゃん。」

____その点は安心してください。あくまで展開として分けられるのはとても大きなもののみです。ここをこうすればもっと良くなったのに!という場面を変えられるように、上手く計算しているので多くて一日3、4カード消費します。

「なるほど。サンガツ!」

____そしてカードにはそれぞれタイプが存在します。

スペードは最悪なルール回避に近づくような極めて困難な選択へ進みます。

原作のシャルロットのような選択を取ります。

ハートは登場人物に好印象を与える発言や言動を行います。

クローバーは身分や地位を意識した発言、言動を行います。これは少し特殊で、前回使ったカードの特性におおじて使い方が異なります。例えば前にハートを使っていたら、この身分ながらにも〜と良いように続きます。スペードならアナタ、庶民の分際で〜と悪い方に続きます。

最後に、クラブは前回使ったカードと同じ進み方をします。ハートならそのまま好印象を、スペードなら危ない言動、行動を。

「なるほど。難しくて何が何だかあんまりわかってないわ。」

____そうですよね。私から助言すると最初のうちはハートとクラブを使い、場合に応じてクローバーを使うという形でよろしいかと。スペードは突き放したい時だけで大丈夫だと思います。基本使わなくて良いかと。

____そういえば、原作小説の内容は覚えていますか?

「ああ。まあまあ覚えてる。だからカードも考えて使うよ。」

____物語が少し変わっても、起こることは全て同じです。随分先の話なので言ってしまいますが、ドレスの仕立てシーンがありました。買うか買わないかで今後の舞踏会等へ着るか着ないか、たかがそんな事が変わるので、これを選択したからといって、新しくイベントが出来ることは少ないです。

「わかった。んじゃ要するにカードいい感じに使えば何とかなる感じね。」

____そうですね。くれぐれもお気おつけて。

「ああ。ありがとう。」

____そして最後にお伝えしたいことがあります。

「なんだ?」

____これから出てくる原作小説の登場人物達皆が小説の通りに出てくるとは思わないでください。

「…というと?」

____あなたのようにこの小説の世界に転生してきた人間が数人居ます。誰とは言えない決まりですが…

「…そいつらはいつから居るの?」

____あなたと同時に来ましたよ。そもそも、あなたが起きたシーンはストーリーの一番初めですから。きっと、私以外の神の側近が今頃説明を受けているでしょうね。

「へぇ。おもしろくなってきたじゃん。俺はゲーム好きでね。頭は良くないけど楽しむには充分だ。」

____なんだか安心しました。あなたなら上手くやっていけそうだって。

「当たり前だ。俺は今日からシャルロットだけどよ、腐っても田中剛だからな。」

____ふふ……それではご検討を祈ります。神の至福がありますように…

「ああ。ありがとう。そういや名前は?」

____私の名前はハナ。これからあなたに助言する者…



「…はぁ。シャルロット、起きましたわ。」

俺はハナと随分話してたみたいだが時は進んでいないようだ。

「痛ってぇですわね…」

するとドカン!とドアが開く音がした。

「お嬢様!!!!!!お母様をお呼びいたしました!!!!!!」


ん?お母様?あのシャルロットのお母様?

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