【リライト】死にたがりとプリン







【作品タイトル】死にたがりとプリン

【作者】ツクヨミアイ様

【原文直リンク】 https://kakuyomu.jp/works/16818622176784197750/episodes/16818622176784336712

【作者コメント】

 ガラリと内容を変えてもいい……との事でしたが、作者様の作品の雰囲気を壊さぬようになるべく大筋は変えずに、けれど自分の手癖でリライトさせていただきました!

 今まで書いたことのない種類の作品を書く方が勉強になるかなーと思い、リライトは自分とは違うジャンルに挑戦しております! 作品の提供有難うございます! 楽しかったです(*^^*)



 ==▼以下、リライト文。============



 午前二時を過ぎた街は、全てがその役割を放棄したかのように沈黙して、静寂が支配している。


 世界は元々自分などには興味はなかっただろうけれど、こんな時間にふらふらと歩いていても街は無関心で、それが今はちょっと有難い。


 だって自分は全てを終わらせようと思っているのだから、今さら関心を持たれても困るのだ。


 死刑台に上がるにしては軽快に歩道橋の階段を上がる。


 欄干に手をかけて乗り越えようと心を決めた瞬間、びゅうと風が吹いて思わず目を瞑った。


「ねぇ」


 突然声をかけられて思わずそちらの方を見る。

 誰もいない、と思ったら、思ったよりも下の方でもう一度「ねぇ」と声をかけられた。


「……プリン、食べる?」


 そこにいたのは、白いワンピースの小さな女の子。

 コンビニで買ったのか、片方の手にコンビニの袋をぶら下げ、小さなプラスチックスプーンですくったプリンを差し出している。


「……喰わねぇよ」


 歩道橋の欄干に手と足をかけ、今まさに飛ぼうとしてる青年に声を掛けるなんて、一体どういうつもりなのか。


 と言うか今は深夜二時。こんな年端もいかぬ少女がここにいること自体可笑しくないか。


 けれど少女は青年の疑問も困惑もどこ吹く風で、まるで友人みたく世間話をするように話しかけてくる。


「これ、美味しいよ。ひとくち食べてみて」


 なんだこの子は。


 自分は白昼夢を見ているのか。いや、今は深夜だけれども。


 それとも、死ぬ前に現れた死神かなんかなのだろうか。



 突然現れた見ず知らずの怪しげな少女の差し出した食べ物など、怪しすぎて普段ならば絶対に口にしない。


 けれど、これでもう人生最後だと思ったら、不思議と食べてやってもいいかという気になってきた。


 少女が差し出したスプーンを、はむりと食んでゆっくりと咀嚼する。


 ひんやりと、優しい甘さが口に広がった。


「……うまい」


 誰に言うでもなく溢れた声に、少女が笑う。


「でしょ。私のお気に入りなの。あのね、他にもお気に入りがあるのよ。明日また持ってきてあげる」



 約束ね、オニーさん。



 そう言って笑った少女は白いワンピースをふわりと翻し歩道に降りて、闇の中へと消えていった。


「いや、明日って……」


 今から死のうと思っていたのに、また明日と言われても。


 何もかもに嫌気が差して、最近は食事をしても美味しいとは思えなかった。けれど不思議と、少女のくれた一口のプリンは甘くて……


 彼女のお気に入りに、興味が湧いた。




 青年は空を見上げた。何も変わらない空と世界。

 けれどいつの間にか、空は東の方から薄っすらと明るくなりはじめている。


 青年は息を吸い込むと、歩道橋を降りて歩き出した。

 さっきより少しだけ、空気が甘くなった気がした。

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