第6話 永遠のじゅうななさい、西の都を後にして
翌日、ゆきはワイドアイランド王国を後にする時が来た。
アークレイ中央駅のホームには、島田さんと、なんとあのお好み焼き屋の店主も見送りに来てくれていた。
「ゆきちゃんさま、この度は本当にありがとうございました。またぜひ、ワイドアイランド王国へお越しください。次は、もっとゆっくりと観光も楽しんでいただきたいですな」
島田さんは、少し寂しそうな顔で言った。
「嬢ちゃん、これ、餞別じゃ。道中、腹が減ったら食いんさい」
店主が差し出したのは、ほかほかのお好み焼き……ではなく、箱いっぱいのもみじマントゥーラだった。しかも、よく見ると「AIもビックリ 店主特製・激辛もみじマントゥーラ(試作品)」というシールが貼ってある。
(うわぁ…… これは食べるのに勇気がいるやつだわ……でも、嬉しゅうございますわ)
「島田んさん、頑固オヤジさん 本当にありがとうございます。 今度はプライベートで、おじさんのお好み焼き、全種類制覇致しますわ」
ゆきは手を大きく振って、シルバーファルコン号に乗り込んだ。
国家間超高速馬車がゆっくりと動き出す。窓の外では、島田さんと店主がいつまでも手を振ってくれていた。遠ざかっていくアークレイの街並み、きらめく海。ゆきは胸がいっぱいになるのを感じていた。
(ワイドアイランド王国、最高でございました。最初は少し怖かったけど、みんな優しくて、ご飯も美味しくて……なによりAI講座も大成功でございました)
永遠のじゅうななさいとして、また一つ、忘れられない素敵な思い出ができた。そして、AIという魔法の道具が、この魅力的な王国でどんな未来を紡いでいくのか、少し楽しみになった。
「さて、姫子ちゃん、中央政府に着くまでに報告書を書いておきましょうか。 その前に、この激辛もみじマントゥーラ、一つくらい試してみようかしら……」
黒髪が揺れる。国家間超高速馬車は、東の空へと向かって、その銀色の巨体を加速させていった。ゆきのワイドアイランド王国でのちょっぴりコミカルで、ハートフルな冒険は、こうして幕を閉じた。次なる任務は何か、それはまだ、永遠のじゅうななさいだけが知っている。
かもしれない。
ワイドアイランド王国出張報告書 ~永遠のじゅうななさい、ギルドでAIを語る~ 音無 雪 @kumadoor
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