高校の近くにある神社で行われる夏祭り。白石天音は無理だろうと思いながらも彼氏を誘ってみて、案の定断られる。自分のほうが好きでたまらなくて、秘密で付き合ってもらっているのだと弁えているから、言い返せない。けれど彼氏のあまりの素っ気なさに思い悩んでしまって……そんな天音と秘密の彼氏との夏祭りが始まる。
誰にも存在を明かせない彼氏との恋愛に悩む天音さん。主人公の心情が端的に、それでいて深々と掘り下げられていく展開にぐっと惹き込まれます。元が『魔法のiらんど』の作品ということもありますが、不必要を削りに削って物語の芯を剥き出させるケータイ小説の王道スタイル、この力強い叙情は本当に味わい深いものですねぇ。
それに加えて構成がいいのですよ。同級生たちの恋愛事情やそれに対する心情が天音さんの思いを浮き彫りにしていき、しかも秘密の彼氏へと繋げていく――憎らしいほど巧い!
彼氏の素っ気なさの理由が知れた後に押し寄せる恋愛カタルシス、ぜひお見舞いされちゃってください。
(「忘れがたし夏の恋」4選/文=髙橋剛)