Free break!!! ~あなたも祠を壊しませんか?~

機村械人

Free break!!! ~あなたも祠を壊しませんか?~


 どうもどうも。


 はじめまして。


 本日は、よろしくお願いいたします。


 いやぁ、こういう、インタビューっていうんですか?


 この歳にして初めてなもので、少しわくわくしていましてね。


 ……え?


 ええ、表の看板ですよね。


 ええ、ええ。


 間違っていませんよ。


 そのままの意味です。


 うちの“ほこら”、自由に壊して下さい。


 むしろ、ウェルカムですよ! っていう、意味です。


 ほら、フリーハグっていう活動あるじゃないですか。


 あれを参考にさせていただいた感じですね。


 はははは。


 ……はい?


 ………。


 あははははっ、なるほどなるほど。


 大丈夫ですよ、私は本当に、ここの管理人ですから。


 管理人の立場から、ちゃんと許可しているんです。


 え?


 なんで、そんなことを、って?


 ほら、最近、外国からの旅行者の方が増えているじゃないですか。


 特に、この町。


 この日本の文化が色濃く残る古都には、毎日途絶えること無く外国人観光客がやって来まして。


 ええ、そりゃもう、問題なんて山のように起こってますよ。


 ニュースやインターネットとかでも、凄く言われてるでしょ。


 歴史的文化財に落書きしたり、神社の境内でダンスしたり、撮影禁止とされている場所で配信したり、鳥居にぶら下がって遊んだり。


 山も川も街中もゴミだらけ。


 世の不満も多いでしょう。


 だからね、私、思い付いたんです。


 そんなにメチャクチャにしたいなら、ご自由にどうぞ、って。


 そういうサービスを提供してあげましょう、って。


 それではじめたのが、先程もおっしゃられていた、あれです。


『Free break!!!』


 流行りに乗って、『あなたも祠を壊しませんか?』、って副題も付けてみて。


 表に張り出したんですよ。


 どうなったと思います?


 もう、大盛況!


 看板を見た外国人観光客がやって来て、祠どころか、鳥居も石碑もご神木も、もう、何もかも壊して行くったら!


 それをカメラで撮影してるもんだから、更に映像を見た人達もやって来て!


 もう、修繕が追い付かない(笑)


 最近じゃ、『早く壊したいからさっさと直してくれよ!』なんてクレームも届く始末で!(笑)


 ………え?


 はい、はい。


 はい。


 ええ。


 大丈夫なのか……って?


 いやいやいやいや。


 大丈夫なわけないじゃないですか(笑)


 ふふふふ。


 これ、ここだけの話ですよ。


 あのね、ここ、もう100年近く歴史があるんですよ。


 それだけ長い間祀られて守られてきたものを、無遠慮に何の信仰心も無いヨソ者共が壊していくんですよ。


 ええ、祟られますよ、当然。


 でもね、それが目的なんです。


 “故郷”に持ち帰ってもらうんですよ、祟りを。


 ここね。


 先の戦時中も、日本国勝利のために多くの兵隊さんや軍部の方がお祈りにいらっしゃったんです。


 ええ、そういう神様を祀ってるんです。


 ……ふふ。


 はははははは。


 わかります?(笑)


 だから、どんどん宣伝して下さい。


 どんどん拡散して下さい。


 一人でも多くの外国人旅行者の方に来てもらって、壊して壊して壊して壊してもらって、その分“持ち帰って”もらって。


 それが、向こうで更に感染していったりしたら。


 ……ねぇ(笑)




(2024年、9月8日、●●府、■■市内に存在するとある祭祀施設。管理者へのインタビューより)




 え?


 行政とかから注意されないのかって?


 ええ。


 ええ、全然。


 全く。


 お国も、完全に無視していますよ。


 ね。


 なんででしょうね(笑)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Free break!!! ~あなたも祠を壊しませんか?~ 機村械人 @kimura_kaito

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ