18話:終戦ご褒美

 封印の儀が終わり、ようやく静けさが戻った夜の祭壇。

 疲労と安堵の中で、俺たちはしばし言葉もなく座り込んでいた。


「……我も、褒美が欲しいのだが」


 ふと、猫の王がどっかりと俺の隣に腰を落ち着けた。

 黄金の瞳がしれっとこちらを見上げている。


「ほれ、撫でよ。よく働いたのだからな」


 俺が手を伸ばすと、満足げに喉を鳴らしながら、王は身を預けてきた。


 そんな中、セレスがモジモジと裾を握りしめて言う。


「……あの。わたしも……すっごく頑張ったから……その、ご褒美……ほしい、な」


 照れ隠しに目をそらしながら、俺に向かって小さく手を伸ばしてきた。


 その手を取って、俺はそっと彼女を抱き寄せ、頭を撫でる。

 そして、彼女の尾骶骨あたりを優しくさすった。


「ひゃっ、ちょ、ちが、いやあっ……っ」


 赤くなって耳まで真っ赤にしながら、セレスは小さく震えていた。

 その唇から、ぽつりと恥ずかしそうな言葉がこぼれる。


「……首輪、つけて……ほしい。あなたの……猫でいたいの」


 その告白に、ミレイナが驚いたように目を丸くし、それから頬を染めて笑った。


「じゃあ、私も。猫になりたい。……あの夜、あんなに心が震えたの、初めてだったから」


 そうして彼女も、そっと俺の手に自分の首筋を預ける。


「ふん……では、我もお主の猫となってやろう」


 猫の王が鼻を鳴らし、どこから取り出したのか首輪を俺の手元に置いた。


 気づけば、俺の前には3つの首輪と、3匹の猫(?)たちが並んでいた。


 ご褒美の時間は、まだまだ終わらなそうだった。


第一部 完

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忘れられた最強術師、猫と暮らしながら弟子をとってにゃんにゃんする 自己否定の物語 @2nd2kai

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