擬似家族に映る新選組の残像

 異国の大地に流れ着いた新選組の面影が、ここまで鮮やかに蘇るとは思いませんでした。剣を交える日々から一転し、商いという全く異なる舞台で「父と子」を装う原田左之助と山崎烝の姿は、ただの擬態ではなく、失われたものを埋め合うような切実な生の営みとして胸に迫ります。烝の幼い姿に閉じ込められた大人の記憶は痛ましくもあり、それを包み込む左之助の不器用な優しさが、かえって彼らの絆を濃くしていく。

 そして、上海、サイゴン、漢口と移り変わる舞台は、まるで彼らの漂流する魂を映す地図のようで、読んでいて心が震えます。一つ一つのエピソードが、異文化の都市に響く新選組の“生き様”を描き出し、読むたびに歴史小説というより生身の人間ドラマを味わっている感覚が強くなります。

 彼らの秘密がやがて明るみに出るのか、そして“父と子”の関係がどんな終わりを迎えるのか──新選組を知る人も知らない人も、魂の再生の物語として、きっと心に残る連載だと思います。

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