第6篇


  □ ◇ □ ◆


 翌朝の土曜日。


 お母さんは泣き腫らした目で「もう二度と私の元から黙っていなくならないと誓え」という旨の悲鳴を、帰宅したばかりの僕の耳に何度も叫び散らかし続けた。

 僕はうやむやな返事をして、二階に上がると奏矢が駆け寄ってきた。


「兄ちゃん、昨日どうしたの?」

「友達とお城を作ってたんだ」

「お城? マインクラフトしてたの? いいなあ」


 僕は「いいだろう?」と笑ってみせた。

 まだ城は建築途中だ。

 それでもそのうちに、完成するだろう。

 白昼夢みたいな刻の中、ひとつひとつのレンガを鈴太と積み重ねることによって――。

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白昼夢の城 紅粉 藍 @lemondodo-s_island0510

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