「裸の王様」をもっとハッピーエンドにしてみた

菊池ゆらぎ

裸の王様と裸の少年


ある国の洋服が大好きな王様のもとに、2人の詐欺師が仕立て屋のふりをしてやってきました。


「愚か者には見えない布を織ることができる」と言う2人に、王様は喜んで服を作ってもらうことにします。

しかし、実際にはそんな布はなく、詐欺師は空の織り機で布を織っているふりをしているだけでした。


出来上がった服ももちろん見えませんでしたが、みんな自分が愚か者と思われたくないので、見えるふりをして褒め称えます。


お披露目のパレードが始まりました。

やはり見物する民衆の誰もが、見えないのに服が見えるふりをするのでした。


しかしそんな中、ひとりの男の子が走り出て来ました。

上半身は裸で、半ズボンだけ履いています。

母親が追いかけて来ました。

「これ、ちゃんとシャツを着なさい!」

「暑いからやだよ!王様だって裸じゃないか!」


「あの子の言うことは合ってる。王様は裸だよ」

「王様は裸だよ」

「王様は裸」


王様は唖然と立ちすくみました。


そうだ、わしは裸である!

くそったれ!皆わしを騙しおって!

正直なのはこいつだけだ。


王様は笑って少年に屈み込んで言いました。

「坊主、わしはこれから衣装を着るんだよ。だから君もそのシャツを着なさい」

「…分かった」


そのやり取りに、周囲からは拍手が起きました。

家来が慌てて絹の青い衣装を持って来ました。黄色のサッシュが付いています。

「わぁー、似合うね」

と少年。

「君のシャツも良いじゃないか」

「これいつも日曜日に教会に行くときに着てるんだよ。汚さないようにしなくちゃ」


すっかり気分を良くした王様は少年に、

「どうだい、一緒にパレードしないか?宮殿に着いたら美味しい食事をご馳走するよ」

「母さんもいい?」

「勿論だよ」


王様は可愛い少年と手を繋いでパレードをしました。至る所で拍手喝采が起きました。


宮殿に戻ると王様は約束通り豪華な食事をさせました。さらに金貨を数枚母親に渡したのでした。

そしてシングルマザーだという彼女の窮状を聞き激しく心を痛めた王様は、シングルマザーを助ける法案を出しました。


めでたし、めでたし。


(終わり)







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「裸の王様」をもっとハッピーエンドにしてみた 菊池ゆらぎ @kiku2134max

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