花だけが旅をする

五月、ライラックの花が咲く時期に日本人の父と韓国人の母のもとに生まれた来夏（ラナ）。しかし来夏が四歳の頃、母は父との別居を決めて来夏を連れて韓国の海辺の町に帰った。

小さな田舎町でいつも陰口を叩かれ、寂しさを抱きながら育った来夏と教師の父の転勤に従って転校してきたカウンは親友になり、来夏は母から教えてもらった、五枚の花びらを持つ幸運のライラックの花を黙って飲みこむと、愛する人と一生一緒にいられるという「ライラックのおまじない」をカウンに教える。

幼なじみの来夏とカウンが日本と韓国を行き来しながら時を重ねて紡ぐ、ライラックに彩られた物語。

※前編：2023.7発行「ガレットNo.27」掲載、後編：2023.10発行「ガレットNo.28」掲載