多分、お前らの青春ラブコメは間違っていない。
ニッコニコ
多分、お前らの青春ラブコメは間違っていない。
「考えてもがき苦しみ、あがいて悩め。ーーそうでなくては、本物じゃない」
やはり俺の青春ラブコメは間違っている。9巻 235頁
この作品には理解できないセリフが多すぎる。
劇的なシーンで語られるセリフはどれも抽象的で、どうもつかめない。
だが不思議と心奪われてしまうのだ。
まるで恋をしたかのように、その言葉の裏側を探らずにはいられなくなってしまう。
それは彼らが話す言葉には、真実が潜んでいるからだ。
目を背けることなど出来ないほどに強力で、突き詰められたものだ。
セリフが抽象的なのは、その真実を隠すためだと言っても良いだろう。
真実とはもちろん『本物』のことである。
本作品を最後まで見たのに関わらず、『本物』の意味を見つけることが出来なかった方が多いのではないだろうか。
この記事を読んで、少しでも理解の支えにしてくれたら幸いである。
なお、この記事は最終巻までのネタバレを含みます。
全巻読破、あるい全話視聴後に読むことをお勧めします。
それでは『本物』の正体について考察しよう。
目次
1いつだって、真実は言葉の裏側に潜んでいる。
2雪ノ下春乃はいまだに悔やんでいる。
3きっと、平塚静は比企谷八幡の幸せを願っている。
4その『本物』は、どこまでも比企谷八幡を守り続けている。
5雪ノ下春乃の青春ラブコメはまだ終わっていない。
6やはりお前らの青春ラブコメは間違っていない。(あとがき)
◯いつだって、真実は言葉の裏側に潜んでいる。
さて、まず注目してもらいたいのは、9巻(その行く末を平塚静は見守っている。)または2期8話「それでも比企谷八幡は。」
の平塚先生との対話シーンだ。
ここでの内容は主に、近日のイベントの進捗から始まり、雪ノ下と由比ヶ浜との関係性、そして最後には比企谷自身の話へと移り変わる。
「……よく見ている。君は人の心理を読み取ることには長けているな」
やはり俺の青春ラブコメは間違っている。9巻 235頁
「けれど、感情は理解していない」
やはり俺の青春ラブコメは間違っている。9巻 236頁
平塚先生が一通り話を聞いた後の言葉である。
このセリフから分かるように、比企谷は間違えたのだ。
解決することが正解だという嘘に従って、他人の感情を度外視してきた。
例)修学旅行、文化祭など
だから、少しずつ奉仕部との関係も拗れてしまったのだ。
「わからないか。ならもっと考えろ。計算しかできないなら計算しつくせ。全部の答えを出して消去法で一つずつ潰せ。残ったものが君の答えだ」
やはり俺の青春ラブコメは間違っている。9巻 228頁
「考えてもがき苦しみ、あがいて悩め。ーーそうでなくては、本物じゃない」 やはり俺の青春ラブコメは間違っている。9巻 235頁
自分自身と向き合うこと。
そして、近くの人間の感情から逃げないこと。
問題はいつだって、感情を含んでいる。
根本を蔑ろにしては、再び問題が浮上するのは当たり前である。
平塚静は訴えていたのだ。
物事の本質を見抜けと。
◯雪ノ下春乃はいまだに悔やんでいる。
「ちゃんと決着つけないと、ずっと燻るよ。いつまでたっても終わらない。私が二十年そうやって騙し騙しやってきたからよくわかる……。そんな偽物みたいな人生を生きてきたの」
やはり俺の青春ラブコメは間違っている。14巻 289頁
雪ノ下春乃は第二の主人公だ。
「ねぇ、比企谷くん。本物なんて、あるのかな……」 やはり俺の青春ラブコメは間違っている。14巻 289頁
彼女も同じく『本物』を追い求めているからだ。
そして、彼女はいまだに探している。
さて、ここで考えなければならないのは、「偽物みたいな人生」とは何か、である。
結論から言おう。
「偽物みたいな人生」とは、「自分で選択してこなかった人生」である。
春乃は、雪ノ下家の長女としてレールに乗っかり、優等生として生きてきた。
それは彼女にとって、退屈だったのだ。(彼女が時折見せる嫌味や、乾いた演技が提示している)
だから、自分と同じ道に行こうとしてる八幡たちを見ると、苛立つのだろう。
そして、ちょっかいをかけたくなる。(共依存、君は酔えない等)
春乃はピエロらしい突飛な言動を見せるが、その根本にあるのは後悔であり、少し苦味が感じられるキャラクターなのだ。
さて、この章で覚えておいて欲しいのは、
『本物』と対照に位置する『偽物』の正体は、
「自分で選択しないこと」であるといことだ。(春乃にとっては人生がそうだった)
◯きっと、平塚静は比企谷八幡の幸せを願っている。
「自分の中で答えはあるのに、それを出す術を君は知らないだけさ。だから、わかりやすい言葉で納得しようとしている。そこにあてはめて済ませてしまおうとしている」
やはり俺の青春ラブコメは間違っている。14巻 305頁
その『本物』(比企谷はこれまでやってきたこと(春乃の君は酔えない、までの行動)が本物だと思ってたが、本当は『偽の本物』だった→『偽の本物』だと知りながらも、『真実の本物』(心から欲しているもの)だと見て見ぬふりをしていた)が『偽の本物』であると見破られた比企谷に、平塚先生が送った助言の一部である。
それらの言葉には、比企谷が『本物』(真実の本物、(比企谷八幡が追い求めているもの)に、たどり着けるように、ずっと前から(9巻参照)提示し続けている真実が隠れている。
「共依存なんて、簡単な言葉で括るなよ」
「君はその理屈で納得するのかもしれない。けど、そんな借りてきた言葉で誰かの気持ちを歪めるな。……その気持ちを、わかりやすい記号で済ませるなよ」
「君の気持ちは、言葉一つで済むようなものか?」
やはり俺の青春ラブコメは間違っている。14巻 305頁
これらを抽象化してまとめると、
『自分の頭で考えるんだ。答えはいつも自分の中にしかない』
と変換できる。
これが理解できれば、ようやく『本物』が何であるのか明確になるだろう。
真実の価値観は、偽物の価値観を消し去る魔法なのだから。
◯その『本物』は、どこまでも比企谷八幡を守り続けている。
「共感と馴れ合いと好奇心と哀れみと尊敬と嫉妬と、それ以上の感情を一人の女の子に抱けたなら、それはきっと、好きってだけじゃ足りない」
やはり俺の青春ラブコメは間違っている。14巻 505頁
「だから、別れたり、離れたりできなくて、距離が開いても時間が経っても惹かれ合う……。それは本物と呼べるかもしれない」
やはり俺の青春ラブコメは間違っている。14巻 505頁
ずっと大人として、比企谷たちを見守ってくれていた平塚先生が『本物』について定義したシーンだ。
平塚先生が思う『本物』を比企谷に提示したのだ。
「どうですかね。わからないですけど」
やはり俺の青春ラブコメは間違っている。14巻 505頁
「だから、ずっと、疑い続けます。たぶん、俺もあいつも、そう簡単には信じないから」
やはり俺の青春ラブコメは間違っている。14巻 505頁
だが比企谷はそれを受け入れなかった。
これこそが『本物』だ。
平塚静は言った。
「共依存なんて、簡単な言葉で括るなよ」
やはり俺の青春ラブコメは間違っている。14巻 305頁
つまり『本物』とは、
「自分自身で考えて、出した答え」だ。
だからこそ、
「(一部抜粋)君の本物は見つかったか?」
やはり俺の青春ラブコメは間違っている。14巻 505頁
に対して、疑い続けると答えたのだ。(現在出した答えが『本物』であるとも限らない。正解はいつだって変化し、納得と共にあるものだから。自己が成長したのなら、解答だって変わる)
自分自身の頭で考え、比企谷自身の人生を歩むために。
『本物』はいつだって、自分の中にしかないものだから。
◯雪ノ下春乃の青春ラブコメはまだ終わっていない。
劇中での春乃の役割は、『ピエロ』だといえる。
比企谷の本心を見抜き、指摘しては番狂せを起こす。
ではテーマ単位で見てみると、彼女にはどんな役目があるのだろうか。
この物語の伝えたいことが、「自分なりの答えを出すべきだ」であるのならば、
春乃は「SNS」に置き換えられる。
それらしい言葉で納得させてしまうのは「SNS」に近しいものを感じる。
考えて欲しい。
無尽蔵に湧き出る誰かの意見に、流され過ぎてはないか?
誰かの言葉を借りてきては、まるで自分が考えたかのように振る舞ってないか?
自己を、自分のらしく表現できるのは、人間の特権だ。
偽物に踊らされ続けてきた彼女がどんな後悔を背負っているのか。
皆さんならもうわかるはずだ。
◯やはりお前らの青春ラブコメは間違っていない。(あとがき)
この記事を読んで、この物語への理解が増しただろうか。
ただ注意して欲しいことは、これも一つの答えでしかないということだ。
貴方も自分なりの『本物』を物語の中から見つけ出せることを願っている。
私はこの作品が大好きだ。
だから、もっと多くの人に魅力を知って欲しいし、誰かの心にずっと残って欲しい。
強力な真実は、時代が流れても人の心に力を与える。
それこそが、物語がこの世の中に存在し続ける理由だと私は思うのだ。
大好きな作品が、長くの時を経ても、大勢の心を震わせ続けられるために。
噛み砕いて、解説(という名のただの自分の言葉への置き換え)っぽいことをやってみた。
長年抱き続けていた疑問が解消されれば幸いである。
もしよかったら、もう一度この物語を見て欲しい。
捻くれ少年の間違い続けた青春劇を。
私も、今一度見返してみようと思う。
この地球上に住む貴方と、感動を共にしていることを信じて。
終わり。
多分、お前らの青春ラブコメは間違っていない。 ニッコニコ @Yumewokanaeru
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