誰も知らない『勇者と魔王』が、今ここにいる

魔王城の最奥。
玉座の間に踏み込んだ瞬間、勇者は思わず足を止めた。

そこにいたのは、千年にわたって人々を恐怖に陥れてきた「怪物」などではなかった。
凛とした気配を纏い、猫を撫でるように微笑む、美しい女性だった。

「力で跪かせよ。懇願など不要だ」

そう語る魔王に、勇者は剣ではなく、対話を選ぼうとする。

だが、この世界はそれを赦さない。
黒き雷と、聖なる光。
言葉と理想は、いつしか剣となって交わり、玉座の間を灼き尽くす。

すべてを懸けて交わした一撃の先、勇者が目を覚ましたのは見知らぬ野原。
魔王の姿は消え、剣も手元になく、ただ空に風が吹いていた。

だが、風の中に微かに混じる、あの声が告げる。

「ひとまず休戦だ」

戦いは終わったのか、それともまだ始まってさえいないのか。
世界の理を問う物語が、ここから動き出す。

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