十八日目 サウナ魔族 vs アイス精霊、魔界温冷戦争開幕!

「観光地の目玉には“温泉”が欠かせん。よって、わが魔界においても“極楽サウナ”を推進する!」


と、サウナ魔族たちは誇らしげに熱波を送り込み、

「涼こそ癒やし、美は冷から生まれる」と、アイス精霊たちは静かに氷の湯を凍らせた。


問題は、両者の新設地がまったく同じ山の中腹だったことにある。


「こちら“灼熱の炎湯(えんとう)”に、今なら天然マグマ石プレゼント! どうだこの汗!」


「“凍てつく水底(いてつくすいてい)”では、氷の妖精があなたの心も冷やします。情熱? 凍らせます」


「情熱は燃えてなんぼだろうがァァァ!!」


「うるさいわ、灼熱のバーベキュー頭!!」


「だれがバーベキューだ!!」


瞬く間に温冷対立が激化し、SNSは大荒れ。


《#魔界温泉論争2025》

・「炎湯最高! 全身から悪い気が抜ける感じがする~!」


・「いやいや冷泉こそ至高。毛穴まで凍る静寂こそ癒し」


・「両方行ったら風邪引いた(※人間)」


そして、ついに。


「……これはもう、“観光戦争”と呼ぶしかありませんね……」


と、サトウが頭を抱える頃には、


・炎湯側は全館サウナ化、蒸気による巨大バナーを空に浮かべ

・冷泉側は氷のスライダー付き“滑る旅館”を建設し


観光ではなく戦略施設の様相を呈していた。



「魔王様! 両勢力が“お互いの客を凍らせor焼き尽くす”計画を立ててるそうです!」


「なんと……それでは温泉ではなく“戦場”になってしまうではないか……」


「もうなってます!!!」


事態の収拾に乗り出したディオクレスは、なんと――


「よし、両方の良さを味わえる“二段式地獄湯”を作る」


と、全長300メートルの上下二層構造の温泉施設を建設。


上層:サウナ魔族による“煮えたぎる地獄湯”


下層:アイス精霊による“凍てつく昇天水”


中間には休憩用の“中立カフェ・ぬるま湯亭”を設置。

名物は「ぬるい抹茶わらび餅(冷やすと消える)」。


そして迎えた――


魔界初の【温冷融合式観光地:湯巡り地獄ロード】

初日は客足もまばらだったが、旅Vloggerがその斬新な構造を紹介すると一気にバズった。


「サウナで一度死んで冷泉で蘇るみたい~♡」


「魂抜けた後に氷水とか、めっちゃキマる!!」


気がつけば、若者層を中心に大人気観光地となっていた。


さらに。


・“地獄ヨガ”イベント(炎+氷で強制集中)

・“熱冷シェイク”販売(口の中でバトル)

・“わらび餅スライダー”(ぬるぬる氷上競技)


など、連日イベントラッシュ。


結果、炎と氷の勢力は――


「……客、増えたな」


「ああ……まさか“共存”できるとは」


と、温冷和解。観光戦争は終結した。



その夜。


「……結局、魔王様がバランス取るんすよね……」


「サトウよ。我らが求めるのは、灼熱でも氷雪でもない。癒やしと笑いよ」


「なんでちょっと名言風なんすか」


ディオクレスは、焚き火の前でぬるま湯を注いだ。


「今宵は、ぬる燗とぬる湯で、のんびりしようではないか。週4勤務の、ご褒美タイムだ」


「……まあ、それはアリっすね。働いたら、休みも大事ですし」


「うむ。明日は何も予定を入れておらん。強いて言えば、魔界パンケーキの試食会だ」


「絶対カロリー爆弾じゃないすかそれ!!」


そんな魔界の夜は、ゆるく静かに更けていった

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週4勤務の魔王様 いぬぬ/犬怒 @inunu123

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