交換告白が実るまでpart.12 ハッピーエンド

 確か僕や礼太郎の推理では。

 矢継先輩がA先輩を手に入れるため、内嶺先輩を利用していたのでは、と。しかし、今回の出来事でA先輩がとんでもないと知っている。自分が人の男を奪った報いが返ってきたのだろうと思っているに違いない。


「……ご、ごめん、馬鹿なことしなければ……」


 下を向き、真正面で栗実さんや内嶺先輩を見れないようだ。ただただ内嶺先輩は微笑むだけ。


「でも、私もこうなってたんだよね。一つ間違えたら……一つ、夜の誘いに乗ってたら」

「……今回はそうだっただけで……違ってたら……違ってたら……」

「いいよ。だってそれだけ苦しんだんでしょ? 散々ここで怖い思いしたんでしょ? それなら、もう責める必要はないし……それにワタシだって、あの男の子を騙してる。騙して交際しちゃったんだからさ……ワタシも同じ罪だよ。こんなの笑って許すって」


 栗実さんは少しずつ明るい顔になっていく。と同時に閉ざされていた窓から夕陽が差し込んで、辺り一帯を照らしていく。


「いいの? 本当にいいの?」

「うん。恋愛の前に友達のことで悩みたくないもん! 今度は大好きな人のこと、ちゃんと教えてくれると嬉しいけどね!」


 二人の仲が険悪にならなかったことに対し、今度は栗実さんがとても嬉しそうな。


「ほ、本当に……大丈夫なんですか!?」


 栗実さんに内嶺先輩から告げる。


「心配させちゃって、気使わせちゃって、ごめんね」


 矢継先輩も続けて。


「ここまで色々やってくれて、ありがとうね」


 謝罪と感謝を伝えられた栗実さん。大はしゃぎして、彼女の眼鏡が夕陽をいろんな場所に反射させていく。色々な意味で眩しすぎる、その笑顔。

 再度矢継先輩は僕達にお礼をして、礼太郎と一緒に警察の元へ。色々事情聴取を受けてくるとのことらしい。

 そもそも礼太郎の親が帰ってこないことに疑問を抱いていたら、と思ったが。ちょうど両親が旅行の時だったらしい。同じく矢継先輩も不在だったからこそ、狙われたんだとか。

 そんなこんなで僕達の忙しい数日間は大勢の人を救って、終わりを告げた。

 ちなみに礼太郎も救われた人の一人。

 去り際に僕にこんなことを。


「今まで女子同士の仲っていうのがやっぱ、どうにもこうにもうまく見られなかったんだよな」

「……まぁ、前にそれに巻き込まれて嫌な思いしたんだもんな」

「でも、こうやって仲直りしてるのを見るとさ……。ほんとっ、やっぱ人との繋がりっていいもんだなって。それが女子同士でも男子同士でももちろん、異性同士でも」

「……良かったな」

「ああ。お前もお疲れさん」



 それから何日かしたのこと。礼太郎も完全復帰で再び、学園喫茶が始まっていく。


「ほらほら、買い出し買い出し……! ってか、まだ仕込みもまだだし、おつりの準備もできてないんじゃ! ちょっとちょっと! 後開店まで一時間なのに、礼太郎くんは何をやってるの!?」


 あわただしい中、礼太郎から送られてきたスマートフォンのメッセージをそのまま秋風さんに見せていく。


「何? いい食材が見つからない? 何言ってんのよ! 早く作らないと、友継くんが包丁持って暴れ始めるわよ!」


 近くで聞いていた友継も驚きの発言だった。そんな中、僕はまたも後悔。彼一人をおつかいに行かせた僕が悪かった、かと。

 いや、その前に金額とかももっと多くするべきだったかな、と。

 一応お試しのリーダーとなって判断に追われる日々。完璧ではないけれども。


「ってか、もうお客さん来るの!? 早過ぎじゃない!? ちょっと追い出してくるわ!」


 今の菜月さんのように思いがけないところで手助けしてくれることもあり、何とか何とか首の皮は、ポテトの皮の薄さ位ではあるが、繋がってはくれている。


「あ、あれ……アンタ……」

「申し遅れました。栗実晴香です。この前のお礼もと思って。皆さんのところに」


 そんな彼女。


「最近は結構、三人で仲良くやれてます……でも、まぁ、二人共部活にも集中して……B先輩もまぁ、失恋と失った友達を忘れるようもう滅茶苦茶やって、県大会行きそうです」


 B先輩はちょっと悲惨だな、と。


「……そ、それは何とも」

「……で、で、それでわたしも今何処の部活にしようかな、なんてものを学園喫茶の皆さんに相談させていただけたらな、なんて思ったんですけれども……」


 彼女の目を見て、思った。何処に行けばいいのか。

 どんな部活をするべきなのか。彼女はアドバイスを貰いたいような目ではない。もう、決心している目だ。

 彼女は僕を見て、自身の耳を突いていた。

 あの時の僕の言葉、届いていたみたいだ。


「つまらなくない人生、生きてみたいと思いましてっ!」


 リーダーとして。いや、今は何とかここで成長することができた一人のなんてことない一人の男子高校生として。

 彼女に差し出す手がある。


「ようこそ、学園喫茶部へ。何か、自分の得意なことが活かせる、この部活へ」

「と、得意ですか……あっ、でも園芸委員ですから新鮮なお野菜とかやすーく売ってくれる農家さんとか知ってたりはするんですけど……役立てられますかね?」


 他の人達も続けて、告げる。「採用」と。「今から行ってきてくれ」なんて秋風さんは頼む始末。

 菜月さんは「開店が少し遅れるって、SNSで連絡した方がいいわよね」なんて、あせっている。

 まぁ、得意なことが無かったとしても。ここは自分を見つけられる場所。

 いつか、誰かの救いに慣れる場所。


「行ってきます! 今日から精一杯頑張りますからね! レインくん! 一緒に頑張ろ!」

「う、うん……!」


 今から、僕の救いになれる場所。

 お客さんが笑顔になれる場所。

 誰もが食を通して、世界を知っていく。幸せを知っていく。アイツは知らなくていい世界があると言っていたけれど。僕は思わない。知れば知る程世界は面白い。知らなかったことが見えて、新たな推理ができるようになる。誰かの心を覗けるようになる。そして困った誰かの心を救うことができるようになる。

 ある意味、いつか心の穴がぽっかり開いた奴を助けることもできるようになるのかもしれない。

 お客さんの「ありがとう」を通して。家庭科室の中でやりがいを覚えていく。


「……みんな! 今日も頑張ろっ!」

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学園喫茶の推理レシピ 夜野 舞斗 @okoshino

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