軽い気持ちで読み始めても、確実に心を掴まれる作品

「もし、人生を最初からやり直せるとしたら?」


そんな甘美で危うい問いを、ここまで冷酷かつ鋭利に突きつけてくる作品はそう多くありません。


『エゴ・リセット・プログラム』は、“やり直し”という希望が、いかに簡単に人を壊し得るのかを描いた衝撃的な近未来SFです。


記憶も人格も消して新しい自分になる――一見すると救済に見える制度が、実は「別人としての死」であるという事実。

その歪みが、主人公だけが制度を拒否したという一点から一気に噴き出していく展開は、序盤から強烈な引力があります。


印象的なのは、「リセットされなかった側」の視点で物語が進む点です。

周囲の人間が“別人”になった恐怖、国家から命を狙われる理不尽さ、そして真実を知ったときの絶望感――どれもが生々しく、読者に「自分だったらどうするか」を突きつけてきます。


「個性とは何か」「自分であるとはどういうことか」
その問いが、読み終えたあとも頭から離れない一作です。

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