『田舎から来た無名の選手』の埋もれた才能が羽ばたく成長物語

地方の片隅で埋もれていた才能が、ようやく光を浴びる――そんな王道でありながら胸を強く打つ高校サッカー物語です。



信号機すらない田舎、試合経験ゼロのまま終わった中学時代というスタート地点は、主人公・遥の悔しさや渇望を鮮明にし、物語への没入感を高めてくれます。

「県下で唯一、寮があるから」という一見消極的な理由で選んだ高校が、実はサッカー界で台頭しつつある存在だったという導入も巧みで、歯車が静かに噛み合っていく感覚が心地よいです。



遥がこれまで披露できなかった才能をピッチで解放し、チームの勝利に貢献していく展開は爽快感があり、努力だけではなく“環境”の大切さも自然に伝わってきます。


また、本作の魅力は主人公だけに留まりません。

凡人、変人、奇才――それぞれが異なる思いや事情を抱えながら、一つの目標「高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ」を目指して集っていく群像劇としての厚みも感じられます。


高校サッカーの熱、夢を追う若者たちの葛藤。


スポーツものが好きな人はもちろん、「何者かになりたい」と願ったことのあるすべての人に勧めたいです。

その他のおすすめレビュー

汐田 伊織さんの他のおすすめレビュー105