あの季節を待っている

ふみその礼

第1話 あの季節を待っている


目を閉じていると

足元の草たちが

我先に故郷ふるさとへ帰ろうとゆらぎ始める

それは季節の変わる朝


どうにか手紙を届けたいな

そう思ってたことが

皿に残るロールパンみたいに

どうでもよくなった


行こうかな


そう思う先のないさびしさ


ただ

誘いはどこにでもある



何ですか?


      あなたを音のない人形ひとがた

      還してくれる 王水です


ゆらゆらしますか?


      はなはなします


はなはな?


      断末魔の叫びです



いちりとらんらん?


      そんな感じです



いつでもいのちの味方はいる

でもうれしそうに仕事をする味方は

きっと聖人悪魔だ


ゆるしてあげよう


神様にだって落ち度はある

でなきゃ

わたしはここにいない



歩まなくても足は疲れ

ためためとささやいてくる



時は言霊ことだまを嫌うので

何も言わない



空にはりついた貝殻虫たち


ひゅ ———— ららら……


     うたがおりてくるよ


もう二度と 

秋は来ないのかも



 せめて椅子のりかを教えてください



そうか………椅子を求めない

その誓いがあったから

わたしは生まれてこれたのか



つくづく


いま

ここにいられることを信じて


風と熱のゆらぎを


      

   待っている


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 あの季節を待っている ふみその礼 @kazefuki7ketu

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