つまらない映画

白川津 中々

◾️

「いやぁマルミたん最高ですねぇ!」


アニメ映画を見た帰り、ファストフードショップで声高に叫ぶ高橋くんを尻目にバーガーをスプライトで流し込む。


「やはりつくし系のヒロインは最高ですよ。おまけに胸も、ね……!?」


「ふぅん」


他人が興味のない話を延々と続けるのは彼の悪い癖である。そもそも映画も付き合いで観ていただけに過ぎず、僕は微塵もそそられなかったのだ。劇中のヒロインなど、まったくどうでもいい。


「しかし、流石に八周目ともなると些か辛い部分はある。記憶を無くしてもう一度観直したい」


「そうなんだ」


「けれどもね。既に来週分のチケットは購入済み。観なければもったいない」


「そっか。まぁ、楽しいならいいんじゃないかな」


「おっと、何を他人事みたいな態度を取っているのか。君の分のチケットもあるぞなもし」


「え? そんなお金ないんだけど」


「気にしないでいただきたい。全額、こちらが持ちます故」


「……一人で観た方がよくない?」


「いやぁ。さすがに寂しい」


「そっか」


あのくだらない映画をまた最初から眺めなくてないけないのかと思うと、気分が沈む。来週も、バーガー確定。

ただ、やる事もないしまぁいいかとも思った。こんな経験も、大人になればいい思い出になるかも知れない。このバーガーの味も、青春の思い出。いつかきっと、笑い話になればいいなと、僕はスプライトを飲み干した。

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