第2話
「……」
黙った携帯電話を見つめて、
『また、ふたりで何かやろうとしてるでしょ?』
「ソーデスネ!」
携帯電話から、聞き慣れた甲高い声がする。
『僕に黙って、こそこそ計画するの何回目だよ……』
「ショーガナインジャナイデスカ! アノフタリダシ!」
「君も君だよ。僕で遊ぶのやめてくんない?
「えー、こっちのが面白いじゃないですか!」
「…‥本名で呼ぶぞ?」
「うっわぁ、それだけはやめてください」
「……」
「……お悩みですか?」
「悩みってほどじゃない。でも、またあのふたりが、僕抜きで何かをやろうとしてるんだと思うと……」
「あー……心配ですよねぇ?」
「いや、心配もしてないけど……」
「……じゃ、何を考えてんです?」
「あのふたりが失敗した時、僕の責任にしないためにはどうすればいいか、って」
「そっちッスか」
「そっちだよ。僕の辞書にはそれしか載ってない」
「その辞書、不良品じゃないスか。そんなの辞めて、ウチの辞書買いません? 今なら期間限定、特別価格でご奉仕差し上げます!」
「商魂たくましいね、赤」
「まぁ、これでもトップ張ってるんで。それなりには」
「うん。じゃ、その売れ残りと、君ごと買っちゃおうかなぁ……」
「えっ……。そんなっ……俺が欲しいだなんて……えっ……そういうことスか!?」
「……僕、君が売れ残りとは言ってないんだけど」
「……スンマセン。調子に乗りました」
「いいけど……君もそろそろ、寝なきゃじゃないの?」
「あ〜、そうッスね……」
「忙しいだろうし、いいよ? 次会った時で」
「……次ッスか」
「うん、次」
「会えるか分かんないッスよ。今とは状況が違うかもしれないし」
「いいよ。無理にでも時間作る」
「さすがに悪いッスよ……」
「僕がいい、って言ったら、いいの。みんなにも協力してもらうし」
「そ、そうッスか……?」
「うん。『次』はある、って見せてあげる」
「そんなら、今回はお言葉に甘えさせてもらいますぅ。けんど、あんまり皆様にご負担をかけるようなら、俺にも俺で考えがありますからね」
「あぁ、分かってる。好きにしていいよ」
「……いいんスか。敵に塩を送っても」
「(ニヤリと笑って)塩送って、砂糖送って、味噌送って、酢送って、醤油まで送って一人前だよ」
「うっわぁ、こりゃてぇへんだ!」
「ふっふっふ。僕の立場ならこのくらいして、度肝抜いて、美味しく頂くくらいじゃないとやってらんないよ」
「ストレス溜まってるみたいッスね。どうです? 今度、温泉でも」
「あぁ、いいね。パーっと脱いでパーっと使って、パーっと出よう」
「いやいや、せめて、浸かっていきましょう。どこでも人を使って済ませんのやめましょう、ね?」
「ふっふっふ……。……あぁ、ごめん。僕疲れてるみたい。寝るわ」
「うん、ですよね。長々とスンマセン。また今度、元気な時にお会いしましょう」
「うん。ごめん。
「いいんスよ。これが俺の仕事ッス。気にしないで休んでください。あなたが倒れでもしたら、
はじまりを。 鈴乱 @sorazome
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