はじまりを。
鈴乱
第1話
「準備完了。いつでもいけます! 隊長!」
「よーし、分かった! 今すぐその銃口を降ろせ!」
「イエッサー! ……えっ?」
「聞こえなかったのか。"銃口を、降ろせ"」
「し、しかし、隊長……、目標は目の前……」
「この大ばか者。
「えー……でも……。こんなに近くにいるのにぃ……」
「近くだろうが遠くだろうが同じこと。いいから、武器を降ろせ」
「ちぇー。一発で仕留めるチャンスだったのに〜」
(スナイパーが銃を降ろす)
「よし。では……」
(隊長が、新たな銃を構える)
ガチャ(銃を構える音)
「これで、終わらせてやる!」
「えっ……。た、隊長?」
「ふはははは! これで、お前の天下など終わりだ! 俺の前で、ひざまづいて許しを
「えー……大人げなー……」
「うるさいぞ、隊員A!」
「隊長、それは大人げないと思いまーす」
「ばかもの! 敵を前にして、なりふりなど構ってられん! 敵前逃亡、俺の恥!」
「なりふり構わないなら、俺が撃った方が……」
「駄目だー! お前がやったらお前の手柄だろう! ここは任せて、先に行け!」
「先って……それ、普通、下っ端のセリフッスよ? それに、俺には先なんて……先、なんて……」
「あ、何か、トラウマに触れたか……?」
「ありすぎて困っちゃーう♡」
「……だから、さっさと行け。さっさと、お前のフィールドに」
「そうは言われましても、今はここが俺の居場所です。ターゲット確保するまでお付き合いしますよ、隊長」
「お前……そんなに俺のことが……」
「あっ、目標逃げました!」
「何!? いかん、追っかけろ!」
「隊長、隊長」
「……っ、何だ?」
「俺、秘密道具があるんですよねえ〜……」
「そんなこと、言ってる場合か! 早く……」
「ジャジャーン。追跡アプリー」
「えっ……」
「これがあれば、ターゲットがどこにいても一発で居場所が分かります!」
「つ、つまり?」
「追いかけなくても、軽々、捕まえに行けます!」
「おお、そりゃスゴイ! スゴイが……、正確なのか?」
「おおよそ正確ッス!」
「そうか。あいつの許可を取ったのか?」
「はいッス」
『ほんとかなぁ……。こいつ調子いいからなぁ……』
「ほらほら、見てください。ターゲット、あそこの店にいるみたいッス」
「(アプリ画面を見て)ココは……! あいつの好きな
「ええ〜、そんなに褒めてもらっちゃ、困りますぅ〜」
「いや、お前ではなく、そのアプリが……」
「そんなこと言って、俺を褒めたも同じですよー」
「ど、どういうことだ?」
「だって、これ作ったの、俺ですもん!」
「……それは」
「そんなに褒めないでくださいよ。へっへっへっへっへ……」
『嫌ーな予感……』
「あっ……。位置情報が変わった……今は……宇宙……? え?」
「あー、バグですかねぇ? あっはっはっは」
「……これだから、若い衆は」
「あー、でも、最新ニュースが、宇宙船出来たって言ってますー。ターゲット、そういうの義務的にトライするタイプじゃないですかー。きっとそれですってー」
「……そんなまさか」
(隊長の携帯電話が鳴る)
(微妙に顔がひきつる隊長)
「もしもし」
『あー、
「……どこにいんの?」
『え、どこだろう? (誰かに聞く声)ここ、どこですか? あーそうですかー。ありがとうございまーす。(電話口に戻って)宇宙だって』
「宇宙の…‥土産……?」
「"隊長ハ 混乱シテイル"!」
「な、何でもいいよ。俺、宇宙とか分かんねぇし」
「あっ、俺の分もお願いしまーす!」
『あれっ? 鈴乱の声。一緒にいるの?』
「え。あ。うん。一応。はい」
『何〜? 何か2人で
「滅相もございません!」
『ふぅん……。まぁ、いいけど、事を起こすなら許可取ってよね。僕はじめ、皆様方の』
「もっ、もちろんです!」
「そっち、楽しいですかー?」
『うーん、なんか、ゴミゴミしてるよ。休日だからかな。あー、僕も休日欲しいなぁ……何で僕には休みがないのかなぁ……』
「(小声)そりゃ、お前がその仕事を選ぶから……」
『なんか言った?』
「いえっ、何でもありません!」
『すずらーん』
「はぁい」
『悪いけど、僕がいない間、クロをよろしく頼むよ』
「もちろん。そのつもりです」
「……俺には?」
『クロに? えーと、まんじゅうでも買ってくよ。宇宙まんじゅう。食べると元気になれるんだって。(独り言のように)宇宙って意外と発展してるんだなぁ……勉強になるなぁ……』
「(期待したのと違うけど、言えねぇ……)」
『えっとー、しばらくしたら帰るから、留守番よろしくねー? クロ。鈴乱』
「イエッサー」
「はーい。気長に待ってまーす」
『じゃっ』
(電話が切れる)
(なぜか落ち込んでいる黒灰)
「隊長、だから言ったじゃないですか。俺がやろうかって」
「だって……だって……俺もビシッと決めてみたかったんだもん……っ」
「ダメっすよ。あの人の鈍感さ、群を抜いてるんですから。正攻法じゃ、敵いませんって……」
「うん……」
「だから、ほら、本部に帰って、作戦立てましょ?」
「うん……」
「題して、『いかにシロを出し抜いて、クロが世界に返り咲くか』作戦」
「う……。それは長くない?」
「じゃー、『返り咲き作戦』」
「うん」
「……帰りましょっか」
「そうだな。ターゲットは、俺には分からねぇ世界に行っちまったみたいだし……」
「そう、ですね……」
「帰ろうか。俺たちの、ホームへ」
「……その前に、それは片付けてくださいよ?」
「え……」
「その、巨大な水鉄砲のことです」
「あ……忘れてた。しまっとこう。時が来るまで」
「そうしましょう。時が来るまで」
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