眩いばかりの光ではないけれど、その輝きには現実をも照らす力強さがある。
- ★★★ Excellent!!!
わたしがまず思ったのは「ああ、この物語が嫌いな人とは友達になれないだろうな」という感慨です。それほどまでにひきつけられるものがありました。
使い魔を操る子どもたちが学ぶ魔法学校の生徒、ミリィ。彼女は使役する使い魔が見つからない落ちこぼれ。だがある日彼女はついに、自らの使い魔に出会う。だがそれは動物でも妖精でもなく、なんと黒い羊のぬいぐるみ(シープさん)。しかもその中に入っているのは、素性もわからぬ口の悪い男の魂だった――からはじまるファンタジ―、それが本作です。
情感豊かに描かれる魔法学校の様子、ミリィとシープさん、その家族、生徒や先生といった個性的なキャラクター、さらにはデュエルと呼ばれる使い魔を使った決闘のワクワク感。すべてが生き生きと描かれています。それだけでも十分読む価値があると思えるほどに。
ですが、わたしがなにより心つかまれたのは、ストーリー全体にあふれる「光」の質感です。過るのは光でありながらも、それはキラキラとしたハッピーでまばゆいばかりのものではありません。ときに陰もある。不穏もある。つまりは陰影がある。
それはミリィ達子どもの世界が、ただ無邪気で害のない存在ではなく、ある意味では大人以上に心ざわつく昏さがある。さらに、シープさんに宿る男の過去の謎がその陰影をさらに深めます。
それでも、ただいたずらに疑心をあおるだけでなく、物語の先にはたしかに希望があるはず、と祈りにも似た「光」もこの物語からはたしかに感じるのです。
この現実感あふれる「光」の肌触り。
それこそが、現実を生きるわたしたちに重なるかのように、リアルティをもって心に迫ります。この質感に、わたしはなにより惹かれたのです。
たかがファンタジーと侮ることなかれ。この作品に宿る光は、読む人の現実をも照らすことでしょう。その力強さに、感服しています。