第16話

×××って呼ぶたびに、胸がじわじわ熱くなるのを我慢してた。

×××って思い出すたびに、背中が寂しくなるのを平気なふりしてた。


×××はたぶん、もう私のことなんて思い出さない。

LINEの履歴も、写真も、きっと全部消えてる。

私のスマホには、まだ残ってるのに。


学校で会うたびに目をそらされて、

でも私は目で追ってて、

そのたびに心のどこかがぴりぴりした。


本当に、嫌いになれたらよかった。

「あいつまじ無理」って、本気で言えたらどれだけ楽だったか。


でも、×××のことは、

ぜんぜん終われなかった。


終わらせてもらえなかったのかもしれない。


この話は、ただの“わたしの日記”だった。


×××と笑ったこと。

×××と喋ったこと。

×××がふざけて撮った写真。

×××がギターを弾いた午後。


それがどういう意味だったのかなんて、

もうわからないし、知る必要もないのかもしれない。


ただ、忘れられなかった。


なんでもないやりとりだった。

毎日の、ちょっとした出来事だった。

でもそれが、私の中では、ちゃんと物語になっていた。


だからこうして、全部書き残した。

×××に伝えるわけでもなく、

誰かに見せるつもりでもなく。


これは、わたしだけの話。

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まぶしい横顔に、私は何度も恋をした 🍬 @rrrrr_18

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