第15話
赤髪にして教室に来たとき、
「どう?」って言われたの、すごくうれしかった。
ほんとは、「似合ってる」って言いたかった。
本気でそう思ったし、ずっと前から赤くしたいって話してたの、覚えてたから。
でも、口がうまく動かなかった。
「なんかやば」って笑ってごまかして、
×××は「だろ?」って返して、
それだけでまた、わたしは何も言えなくなった。
伝えたかったことは、山ほどあるのに。
ぜんぶ心の中で渋滞して、ひとつも外に出せなかった。
わたし、ほんとうは、
×××があのとき戻ってきてくれるんじゃないかって思ってた。
でも、そんなことあるわけなかった。
チュッパチャップスのことなんて、
もう忘れててもいいはずだった。
でも、たまに思い出す。
nちゃんが舐めて、×××がふざけて舐めて、またnちゃんが舐めて、
そして最後に、わたしが口に入れたあの飴。
なにが混ざって、どこからどこまでが誰のものだったのか、もうわからなかった。
でも、それを舐めながら「もうどうでもいいや」と思った自分のことは、
今でもしっかり覚えてる。
あの味は甘かった。
でも、気持ち悪かった。
口の中にずっとへばりついて、飲み込んでも消えなかった。
今でも、たまにその味を思い出す。
そのたびに、×××の顔が浮かんで、
ティアラ、ギター、LINEの通知、笑い声、
そういう細かいものたちが、一気に脳に流れ込んでくる。
それが、嫌で。
それでも、嫌じゃなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます