ナナたん ハワイアン

オカン🐷

🌺アロハ~

「ばあば、なにちゅくってるの?」


 リビングに電動ミシンが置かれている。


「老人会の舞台で着るスカート。ナナちょっと履いてみて」

「こりゃまたブルーの地に赤のハイビスカスが鮮やかだねえ」


 涼子が目を丸くしている。


「こう?」


 ナナはショートパンツの上から履いたスカートの裾を持ち一回転した。


「うん、いい感じ」

「おお、ナナたん可愛い、可愛い」


 涼子が手放しで誉める。


「デへへへ、ナナかわゆい?」


 流れてくるアロハミュージックに合わせてナナは腰の高さまで上げた両腕を泳がせた。


「アロハ・オエ~」

 

 ナナは右に左へと身体を動かす。


「商工会議所の老人会が何でハワイなの?」

「所長さんの奥さんがハワイの出身らしいって」

「で、何でナナたんがその老人会の舞台に立つの?」

「もう、何で、何でって、梨沙子さんの授賞式に所長さんもみえていて、この子たちを見て是非ともという話なの」




 舞台のそでで次の出番のナナたちは、係りの人から手首にハイビスカスの花をつけてもらっていた。

 ナナは満面の笑みでアロハダンスをこなしていたが、りょうは舞台に立ったナナたちを見て、オヤッと思った。





「ナナたん、お疲れ様。これ山根シェフに教えてもらって作ったクッキー。どれがいい?」

「「うわあ~、かわゆいクマたん」

「好きなの選んでいいよ」


 籠の中には3匹のクマさんが並んでいる。


「えーとっ」


 ナナは伸ばしかけた手を引っ込めた。


「本当に好きなの選んでいいよ」

 ナナは意を決したように手を伸ばした。


「ナナ、これがいい」


 ナナの手にはクビにオレンジのリボンをつけたクマのクッキーが握られていた。

 赤いリボンとピンクのリボンのクマが籠に残されていた。


「ナナたん、本当はピンクが好きだよね。舞台のときのお花もマナたんと採り替えっこしたのはなぜ?」

「マナたん、ピンクちゅき。みんなたのちゅくおとりたい。ナナ、おねえたんなの」


 まだ4歳なのに姉としての自覚があるのか。それに皆で楽しく踊りたいなんて、あまりのいじらしさにハグしたくなる涼子だった。




「それでねルナちゃん、何でいつも笑顔なのって訊いたらね、聴覚障害者の庭師のジョーに言われたんですって」

「あらっ、話ができるの? で、何て」

「(ナナちゃん、何怒ってるの?)ルナちゃん、怒るってこうよ」


 涼子は頭の上に人差し指を2本立て、鬼のようなポーズをした。

 ルナも同じ様にしてみる。


「(怒ってないならニコニコして)と言われたそうよ」

「なるほどね。顔の表情でコミュニケーションを図るとそういうことになるのね」

「でね、ジョーに手話を教えてもらうことにしたの。ジョーの仕事がひと段落つく3時頃から」

「あら、素敵ね」


 ルナは胸の前で手を叩いた。

 なるほど、ナナはママの真似をしているのかと思った。



          【了】


 











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ナナたん ハワイアン オカン🐷 @magarikado

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