第16章 ルイと美咲、それぞれの覚悟

文化祭当日の朝。


教室はすでに慌ただしい準備の渦中にあった。机が移動され、壁には色とりどりのポスターが貼られ、そして何より、俺の視線はルイの方に釘付けだった。


ルイは、昨日よりもさらに手の込んだメイド服を身にまとっていた。黒と白のコントラストが鮮やかで、ふわりと揺れるスカートの裾からは、透けるような白いニーソックスが覗く。猫耳カチューシャも健在で、その耳がぴくぴく動くたび、俺の胸は苦しくなるほど高鳴った。


「陽翔、見ててよ。絶対勝ってみせるから」


ルイの瞳は真剣そのもの。笑顔の奥に秘めた強い決意が伝わってくる。


一方、美咲も負けてはいなかった。


彼女は清楚な制服の着こなしに気を配りつつ、文化祭用に用意した特製ドレスを持ち歩いていた。そのドレスは純白で、ふんわりとしたフリルが特徴的。美咲はまるで王道ヒロインのように優雅な立ち振る舞いで、どこか高貴なオーラを放っている。


「陽翔にふさわしいのは、私だけよ」


美咲は小さな声でつぶやくと、誰にも聞こえないように俺に向けてウインクをした。


俺の心臓は、ルイと美咲という二人の幼馴染が、目の前でガチンコの勝負に挑む姿に揺れ動いていた。


「……どうするんだよ、俺」


俺は深呼吸をして、目の前の二人に声をかけた。


「俺は……どっちも応援するよ」


ルイも美咲も、一瞬驚いたような表情を浮かべたが、やがてふたりは互いに意識を研ぎ澄ませ、文化祭の幕開けへと向かっていった。


その日、教室の中、廊下、ステージ裏は、熱気に満ちていた。


それは単なる文化祭の準備ではなく、三人の関係の新たな局面を迎える戦場でもあったのだ——。

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