第15章 文化祭準備日和、波乱の幕開け

「なあ、ルイ……マジでやるのか? この格好……」


「やるに決まってんじゃん♥ 陽翔のクラス、今年はメイド喫茶だし」


——文化祭前日。


教室はすっかり準備ムードで、装飾や立て看板、衣装が机の上を埋め尽くしている。俺たちのクラスは王道の『メイド喫茶』。そして、なぜかルイが全力でノリノリだった。


「はい、じゃ〜ん! 似合う?」


俺の目の前には、黒のフリルドレスに白エプロン、ふとももまで露出したニーハイソックス、そして猫耳カチューシャを装備したルイの姿。


「っっ……ッ、そ、それ、反則だろ……」


思わず目を逸らしたくなるほど可愛い。

男だとわかってるはずなのに、どう見ても“メイド系ヒロイン”そのものだった。


「えへへ〜、陽翔、めっちゃ見てる。まさか……また“してる”?」


「ち、ちげーよ!」


「ふふ♥ いいよ? してても。むしろ、してほし——」


「だから黙れっっ!!」


笑いながら俺の腕に絡みついてくるルイ。

こっちは冗談じゃ済まないくらい、体温が上がってた。


だけど——そのときだった。


「……あれ、陽翔?」


聞き覚えのある、でもどこか懐かしい女の声。

振り返ると、教室の入り口に立っていたのは、


「……み、美咲……?」


セミロングの髪を揺らし、制服のスカートを風になびかせながら、

美咲が微笑んで立っていた。


「やっぱり、陽翔だったんだ。久しぶり……中学ぶり、かな?」


突然の再会に言葉が出ない。


中学時代、毎日一緒に登下校していた女の子。

告白未遂で終わった、俺の初恋の相手——それが、美咲だった。


「今日からこっちの学校に転校してきたの。よろしくね♥」


「ちょ、ちょっと待て……な、なんで今……?」


「うふふ、理由は……陽翔に会いたかったから、かな」


一瞬で空気が張り詰める。

俺の腕にぴったりとくっついていたルイが、美咲をじっと睨む。


「……誰?」


「えっと……ルイ、この子は美咲。中学のときの——」


「ふーん、中学のときの“なに”?」


「っ……と、友達……かな」


ルイの声が低くなる。いつもの明るさはどこへやら。


「初めまして、美咲です。陽翔の……昔の知り合い。でも、まだ終わってないと思ってるよ?」


「……は?」


「好きだったんだよ、陽翔のこと。今でも、ね」


ルイの笑顔がピキリと引きつる。


「へぇ〜、そう。でも今は私の彼氏だけど?」


「だったら、勝負しようか?」


「勝負……?」


「文化祭のステージ、女装コンテスト。陽翔に選ばれた方が、本命ってことで♥」


「……望むところだよ」


——こうして、文化祭前日。

まさかの“彼女”VS“元幼馴染”の修羅場が始まるのだった。

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