第7話
煤が目に沁みて涙が出たとき、私はこの感覚を、それもずいぶん昔に、経験したことがあると思った。そうだ、あれは私がまだ小さい頃、誕生日ケーキに刺さったろうそくを吹き消した時だった。今でこそ考えられないことだが、高々数本しかないろうそくの火を消すのに、随分苦労をした。その達成感とともに感じた、目への不快感と同じだ。
思えば、いつから誕生日ケーキからろうそくはなくなったのだったか。最後に誕生日にケーキを食べたのは何年前だったか。スマートフォンのカレンダーを開いて、日付を確認する。そういえば、今日は誕生日だった。開け放った窓の外に目をやる。もう日は落ち始めていた。だが、幸いにも火はある。
私は財布だけを掴んで、急いで家を出た。
ジッポ 藤宮一輝 @Fujimiya_Kazuki
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