私の百合観は「女子の輪」
冬寂ましろ
***
自主企画「【百合作家様へ】あなたが持つ「百合観」をインタビューさせてください!」に答える形で書いてみます。
■Q1. 百合とあなたの距離感(身近であったり、憧れだったり)について教えてください。
遠い川の向こうにある暖かい何かです。
かつて私もそこにいたのだけれど、もうそこには行けないし、行ってはいけないという気持ちで、対岸を眺めている、そんな距離を感じています。
■Q2. あなたの百合観(百合とはこうだと思っているなど)について教えてください。
百合は「女子の輪」から生まれると思っています。連帯感というか、表現しずらい独特なつながりというか。
いじめてくる男子にみんなで団結して追い返すとか、どうしようもないことに泣いてると怒ったり寄り添ってくれる女子達とか、そんな女子の輪が大人になってもどこかで続いていている気がするのです。
これをいちばん深く思ったのは、私が具合悪くしたときに、同じ病気の女子と集まって、朝までずっと恋愛について話していた不思議な女子会でした。
若い時はレズバーに友達がいたので、そのお店にずっと通っていました。まわりにカミングアウトできない百合なカップルが、そこで誕生日会を開いてもらったり、とてもやさしいお店でした。
あと私の家の原風景が、祖母と叔母と母と私が、六畳一間のコタツを囲みながら寝てた風景です。みんな仲悪いんですが(笑)、それでもいっしょに寝ていて、そこが私の安心できる場所でした。
これをみんな女同士の輪として考えると、こんなところから百合が生まれてる感じがしています。
そして百合カップルがいたら、そうした女子の輪がそのまわりにもあるのかなと感じてます。
■Q3. その百合観をあなたの作品ではどのように表現していますか?
そんな輪で起きる「ほんの一瞬の機微」を話しの起点にするようにしています。女の子同士で「これ、かわいいよね?」と友達に言わせる、わずかな優越感や抵抗感から、人ではなくなっていく話しとして『寝ているうちにそこへ着いてたってこと、あるでしょ?』を書いたりしました。
『銀河逃避行百合!』では遠退く/近づく女子同士の距離感、『明けない夜へ歩き出す。醒めないようにと願いながら。』では助けてくれた/助けなきゃといった女子同士の依存をテーマにしています。
あと全般的にそうしているのですが、意図的に手をつなぐ描写を多くしています。誰と誰が手をつないでいるのかを見ると、この輪の状況がわかるように書いています。
■Q4. あなたの作品では、その百合観を使って、何を書きたいのですか?
私の執筆テーマになっている人の泥のような感情です。
友達を彼氏のところに行かせなくて泣いて見せたり、ずっと自分の感情を認めたくなくてひどいことを言ったり、そんな人としてだめだけどそうせざるをえない、そんな人として抗えない感情を書いていきたいです。
それこそが人であるし、愛でなければならないものだと、私は思っています。
また書きづらいものを書いてるな……と、思われそうですが(笑)。
■Q5. あなたの作品に近いと思っている他作家の作品には何がありますか? マンガでも映画でもかまいません。
好きな作品や目指している作品はたくさんあるのですが、自分の作品に似ているものって、あまりないんですよね……。
最近ちょっと思ったのですが、漫画だと幌山あき先生の作品に近いかもなと思いました。『マーブルビターチョコレート』のやるせなさとつながりの求め方は近いかなと……。
どなたかみつけたら教えてください(笑)。
■Q6. あなたはどうして百合を書くんですか?
私にとって身近なテーマであり、残しておきたい私のかけがえのない感情だからです。
■Q7. これからどんな百合作品を作っていきたいですか?
楽しいもの、やさしくなれるものにはなりますが、テーマとしては生きるとか死ぬとか救いとか、そうした普遍的などうしようもないものと組み合わせて書いていくんだろうなと、ぼんやりと思っています。
これからも甘くて苦い話を書いてまいります。よろしくお願いいたします。
<了>
私の百合観は「女子の輪」 冬寂ましろ @toujakumasiro
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