概要
次からはいつも通りに戻る予定です。
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- ★★★ Excellent!!!執着する心を消すのは、怪異か信心か
寂れた小寺に訪れた薬師〝クスノキのりん〟の体験を語る本作は、〝一服蛭〟という日常外のモノと、それに係る人の心の在り方、生き方を問いかけます。
作中の知円という名前の老僧。
彼は作仏に専心することにより諸事の執着から離れています。
ただその執着を無くしたいという執着までは、無くすことができない。
そんな懊悩を抱えてもいるのです。
また知円は執着する心を、仏道修行を経ずに簡単に無くす手立ても持ってもいるのです。
僧である知円は、成るかどうかわからない仏道をゆくのか?
それとも簡単に執着を消す手段を取るのか。
この老僧の選択とともに、物語は読むものへ心の在り方をも問いかけます。
人間は…続きを読む - ★★★ Excellent!!!評者が知る限りにおいて極上な仏僧の描写
仏教で究極の目標は悟りを開くことと云われます。しかし、田畑の作物の出来を気にしていたり、箪笥の出来を気にしていたり、貸した金が返ってこず首を括る心配をしていたり、人に役に立つ仕事をしている限りは迷いがつきまといます。故に仏僧は世間を捨てて出家します。
しかし地位が人の心を確実に決める訳でもなく。出家して、なお惑うものです。
キャッチコピーは「私はね、御仏のお姿を彫りたいのです」
「~~たいのです」 それは何と執着と未練に満ちた物言いか。しかも向かう先が仏の姿を写す仏像であるという皮肉。仏僧は惑えども、仏は助言も力も貸しません。
そこに一撮み、「薬屋りん」シリーズに独特な摩訶不思議な事…続きを読む - ★★★ Excellent!!!執着と葛藤。そこからの解放。人にとって必要なのは、一体いかなる選択か
二重三重に考えさせられるテーマでした。
旅の薬屋である「クスノキのりん」。彼が立ち寄った寺には、一人の僧がいた。
僧である知円は仏を彫ることに執着心を抱いている。しかし、どうも理想としている「忘我の境地」には辿り着けない。
その一方で、寺には「ある品物」が伝わっているという話をしてくる。
小箱の中には「一服蛭」と呼ばれる代物が入っており、その蛭には「とある力」が備わっているという。
この蛭の効能というのが、実に考えさせられるものでした。
蛭が血を吸うように「あるもの」を吸い取ってくれる。それは確かに心を軽くしてくれ、「救い」に似たものをもたらしてしまう。
でも、それ…続きを読む