その人をその人足らしめるものは何か?
- ★★★ Excellent!!!
昔、スマホのAIサポートと会話をして遊んでことはありますか?
もしある方は、本作を読めばあの時と同じ感覚が蘇る事でしょう。ですが、本作に登場するキャラクターたちは違います。
通り魔に襲われ、死んだ幼馴染が謎の研究員によって機械を埋め込まれてしまうところから始まる本作。無事に蘇った事に喜ぶのも束の間、幼馴染の様子がおかしい。まるで、スマホのAIサポートのように定型文的な言葉ばかりを言う幼馴染は、一言で言うと『ロボット』のようになってしまいました。主人公たちが話し掛けても、会話の意図を汲み取ってもらえず、聞いてもいない天気の詳細を喋り出す始末——。
機械によって蘇った幼馴染は、同期する事によって生前の自分を、記憶だけ、取り戻していきますが、相も変わらず喋り方や態度は『ロボット』そのものです。幼馴染は、生前の幼馴染の記憶を持っただけのロボットなのでしょう。哲学の分野には『その人その人足らしめるものは何か?』という問いかけが良くありますが、本作は正にその問い掛けに葛藤していく登場人物達を楽しむ物語だと思いました。
作者さんが提示した本作のキャッチコピーは『幼馴染に戻るのか、それとも別人になってしまうのか』——です。全ての記憶を取り戻した時、幼馴染はいったい誰になってしまうのでしょうか?
記憶を持っただけのAIなのか? 記憶を取り戻した幼馴染なのか? それとも、生前の幼馴染の言動や態度をコピーしただけのAIなのか? はたまた、新たに自我を獲得した誰かになるのか——。
その人をその人足らしめるもの。
AIが人間性を獲得するのか、それとも、幼馴染が自分を取り戻すのか。
その答えを知りたい方は、是非とも本作をご覧下さいませ。