死んだ幼馴染がAIになった日

ラゲク

俺の罪

第1話 白鳥愛華の天気予報

 白鳥愛華しらとりあいかは僕の事を名前しか知らなかった。いや、正確に言うと名前だけ憶えていてくれていたのだ。


「愛華、今日もいい天気だね」

「はい、今日は一日中快晴でしょう。私がスマホから同期した際に得た情報によると、降水確率0%、絶好の洗濯日和です。」

「う、うんそうだね……、いい天気だ」


 白鳥愛華しらとりあいかは、幼馴染である僕だけは憶えていてくれた。前のクラスメイトの名前も、思い出も、何もかも忘れてしまっているのに……


「し、白鳥さん、今日はいい天気だねー」


無表情の彼女の顔を、心配しながら話しかけている女の子、愛華と仲の良かった後輩の赤羽葵あかばねあおいだ。俺と同じ中学で、愛華の事を慕っていた。


彼女の事を愛華は憶えていない、あの悲惨な事件が起きる前は、もっと気軽に話せる間柄だったのに、今ではベルリンの壁のように、お互いの想いは伝わっていない。


それでも彼女が、毎日愛華に話しかけているのは、彼女が優しいからもあるが、「もしかしたら、自分の事を思い出してくれるかもしれないから」と、友人の多い彼女は諦めずに話しかけているのだ。


「はい、その感想は桐谷晴夫きりやはるおも言っていました。降水確率0%で絶好の洗濯日和、しかし、朝の情報から時間が経ちました。最新の情報を更新するために、スマホにアクセスして同期をおこなおうと……」

「あ~はいはい、正確な情報をありがとう愛華」


俺は彼女の行動を止めた。


「そ、そっか~……、晴夫くん、愛華先輩……じゃなかった、白鳥さんの事よろしくね! もし何かあったら呼んでね! 勿論、私の事思い出したらすぐに教えて欲しい!」

「ああ、わかったよ」


俺は彼女が教室の外へ出たの瞬間、重たい肩の荷を下ろした。



 昼休みになり、俺は愛華と一緒に昼ご飯を食べる。普通男女2人が、一緒になって昼食を食べるなんて、からかわれる案件なのだが、俺たち2人に向けられるのは、憐れみと同情の声だ。


「晴夫の奴も可哀そうだよな、白鳥さん係なんて……」

「そもそもアイツが原因だって聞いたけど……」

「そう、晴夫がちゃんと彼女を守れる男だったら」

「年上の女だから守るなんて考えても無かったんじゃないの?」


他の男子共の小声が聞えて来るが、それにも慣れてきた。そんなことより愛華に注意しないといけない


「愛華、学校ではスマホからの同期はナシだ。あと、空中でメッセージを見ないで、1人SFの世界に行かないで……」

「何故でしょうか? 最新の情報なら、皆さんをより快適にサポートできます。それにワイヤレスであるため、コードなど接続するための物は不要です。不自然でしょうか?」

「うん、それでもダメだ、何故なら人間は雨が降る予測なんて出来ないからだ。」

「ネットで調べますと、トンボの羽休めの習性から……」

「はいはい、わかったよ。」

「申し訳ございません、brainブレイン artificialアーティフィシャル Intelligenceインテリジェンスsupportサポートは、失った脳の欠如を補助するためAIによるサポートを行います。AIはインターネットから情報を得て日々学習します。」

「ブ、ブレイン……」

brainブレイン artificialアーティフィシャル Intelligenceインテリジェンスsupportサポートです」

「……分かった、ネットで調べることに文句は言わない。けど、何て言えばいいのだろう? もっと、直感を信じろっていうか……」

「わかりました、確率の計算ですね。」

「なんか違う……」



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