第4話 しょうらいばいく、にくくいねぇ後編

 本題に入る前に、ふと思い出した件。

 子供の頃、私のところには犬も猫もいて、今と違って猫は、内と外出入り自由みたいなね。

 今は田舎でも家猫が主流というか、そうあるべきというか、そのへんは賛否両ありそうだけども、私個人は家の中で快適に過ごしてほしい派。

 

 さておき。

 問題は犬の方。


 ある日、犬が突然いなくなってて、どうしたのか家族に聞くと

「ああ、逃げ出した」

 そう父親が言ってて、子どもの私は泣きわめきつつ、必死に探したけども、当然見つからず。

 その時は全然気が付かなかったけども、おとなになってから思えば、餌皿はキレイに洗われてたし、首輪は仏前にあった時点で、それは親がついた嘘だったのかも? って話。


 逃げようが、死のうが、結局悲しいのは変わらないけど、【死んだ】ってことをさ、父親自体が口にしたくなかったのかなって、今は思う。

 理由の一端には、死因とか、子どもに対する配慮とかもあったかもしれないけども、そんな親も他界してて文字通り、答えは墓の中まで持っていかれたわけですが。



 

さて、本題。

 個人事業主になってから、たまに手伝いに来てくれてたNくんって子の話。

仕事は出来るけど、なかなかに食いしん坊で、打ち上げの際は、

『ごめん、食べ放題で我慢してね』

と、言わなければならなかった。

 悲しいかな、彼のお腹を高級焼肉店なんかで満たせば、私の財布が瀕死になるのです。(当時の経済状態では特に)

 コースだと、足らないなぁっ、て顔をするのです。

 知りうる限り最強くいしんぼうで、

「食べないなら、ください」

って言えるタイプ。

 食べ物に貪欲。

 それ以外に関しては、すごくいい子でした。


 そんな彼が、お肉を食べながら言った言葉。

「早死してもいいから、好きなもの好きなだけ食べます」 

 健康診断でもだいぶ注意されてたらしい。

 そのときは彼らしいと思った。


 仕事が繁忙期を抜けると当然、会う機会もひらくわけで。


 ある日、近所のプラモ屋のおじさんと、店先で遭遇。

「Nくん、残念だったね」

 的なことを言ってきた。


 Nくんの趣味はガンプラだったのは知ってたし、その店の常連なのも知ってた。

 けども、残念とは?


 そのおじさん曰く、

「注文品が届いたから、連絡したら妹さんが電話に出て、亡くなったって言われてさ」

 そしておじさん曰く、つまり妹さん曰く、

「起きてこなかったから、見に行ったら死んでた」

 とのこと。


 事件性はないってとこまでで又聞きは終了。

 正確な死因はわからない。


 すぐに連絡するべきだったかもしれないけど、そんなの、彼の家族になんてきけばいいんだ? って前編のTくんのときの母親みたく、家族は悲しんでるだろうななんて考えてたり、まあぐるぐる余計ない思案してて、しばらく時間を置くかとか、こういうとき、LINEとかで送るにしても、なんて送るんや? とか。


 しばらくウダウダしてから、とりあえず電話したけど、『お客様の……』云々。


 結局、一年が過ぎ。

 彼が住んでたのは親元の実家で書類上の住所は知ってたから、ダメ元で凸しようと、御仏前で手を合わせようと思って向かったら、もう引っ越してそこはもう売家になってた。


 一年でそんなことある?

とは思ったが、家庭の事情なんて他人が知る由もない。



 健康に気を使って生きてれば、もっと美味しいもの長く食べれたんじゃないのかな、なんてさ、生きてる私は勝手ながら思ったわけ。


 早死が過ぎるよね。

 まだ手伝ってほしいこと、いっぱいあったのに。


 

 彼のことは記憶に新しいから、鮮明なんだよね。

 思い出もいっぱいあるけども、それは趣旨とは違うから割愛するよ。


 書いてるとさ、改めて寂しく思う。

 

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死んだ人、生きてる私。 七緒縁 @nnoeni

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