それは感性の臨死体験か。


 営利目的の組織にとって、自分の感性や趣味が適しているとは限らない。

 下手をすれば「無駄」と一蹴されることすらある。

 著者の友人・Kもまた、長い職務の中でゆっくりと自分を擦り減らしてきた。

 それが限界に達して死を迎える寸前、彼に奇跡が起こる――



 臨死体験の前後で、まるで別人のように生きるという話はよく聞かれる。

 それは肉体的でなく、精神的であっても同じことが起こるのか。

 真偽は本人にしか分からないのだが、本編の総括における生き生きとした表現こそが、
 Kの「裏返り」をはっきり示す証拠なのではないかと感じられた。