またね!

麻田 雄

『またね』


「またねっ!!」


 軽くそう言われた。


 ”また”が”いつ”かは分からない。


 明日、偶然会うかもしれない。

 もう二度と会わないかもしれない……


 流石にそこまで希薄な関係でも無いから、それは無いと思うけど、それでも”また”は分からない。


 そこに確たるものが無いからだ。

 ……でも、そう決断したからこそ”また”があるのかもしれない。



  ◆  ◆  ◆



 互いの想いが同じだった気がしていた頃もあった。

 でも、どうしても核心に触れられなかった……。


 自分の勘違いで、全てを壊してしまう可能性が怖かった。

 確証が欲しかった。


 だから、そう……待つことしかできなかった。



  ◇  ◇  ◇



 その”ズレ”は次第に大きくなっていった。


 気付けば、何が元の形だったのか思い出せない程に。


 その”ズレ”が歯痒くて、切なくて、苦しかった。


 いっそ全てを投げ捨てたくなった。



  ◆  ◆  ◆



 そうして今に繋がる。


 全てを吹っ切れたからこそ”友達”で居られる。


 ただ、仮定を考える事はある……。


 でも、そこに固執したり、後悔したりはしない。

 そう思えるくらいに、今も大切で、今は幸せなんだ。



 だから笑顔で応えられる。



「うん!またね!」


 と。



     完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

またね! 麻田 雄 @mada000

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ