「じゅうななさい」とシュークリーム好きな妖精さん
音無 雪
エンジニアの妖精
午前五時
私の隣には疲れた顔をした女性が座っています。
ホットミルクの入ったマグカップを手のひらで包み込むようにしながら口にするのはマミさん
いつもの元気は無いようでございます。先程までキーボードをたたき壊す勢いでタイピングしていましたからね。おかげさまで午前八時までの期限と言う無理難題に応えることが出来ました。お疲れ様でした。
そう言う私もホットミルク組でございます。流石に疲れました。思考が停止しているようで今の頭の中は『ホットミルクってあったかいな』だけでございます。
何も考えず窓の外に明るくなって行く街並みを眺めながらのホットミルク たまには良いものでございます。
「なんとかなったけどね。でもあと5本はコーディングの残りがあったはずなのに、いつの間にか終わっていたのよ。助かったんですけど不思議な気分」
それは伝説の妖精さんではないでしょうか。深夜に意識が朦朧としていながらも頑張っているエンジニアのもとにあらわれてお仕事を手伝ってくれる優しい妖精さんですよ。三徹くらいすると姿が見えると聞いております。
「かなり技術力の高い妖精さんよね。ソースを見ると私よりもきれいに構築してあるもの」
ぜひチームに勧誘したいですね。求人票を張っておけば見てくれるでしょうか。給与面が難しそうですね。金銭はいらないと思いますし何を用意いたしましょうか。
たしかヨーロッパで伝えられているコロボックルさんにはミルクなどを用意しておくと手伝ってくれると伝承がありましたね。
「ウイスキーを作る時に熟成中の樽の中で減ってしまう分を『天使のわけまえ』なんて言いますよね。お酒も好きなのかな。でも天使と妖精は違うよね」
ウイスキーを熟成させるお手伝いをして、お褒美に少しだけウイスキーを頂く天使さん、夢のある話ではありませんか。天使さんは可愛い顔をしておりますが、すでに成人されているようでございます。お酒は二十歳になってからですよ。
それに対してコロボックルさんは長命種族と聞いておりますがミルクなんですよね。意外です。見た目よりもお子さまなのでしょうか。
ちなみに私は永遠のじゅうななさい 成人しておりませんのでホットミルクでございます。
§
「おっはようございまぁす。可愛いアリスちゃんのモーニングサービスですっ」
元気な後輩のアリスさんが来てくれました。自分から可愛いと言っておりますが、実際可愛いのですよね。そしてこれが嫌みにならない不思議な雰囲気を持つ女の子 「不思議なアリスちゃん」と呼ばれる後輩でございます。
抱えていた大きなバックから机の上に広げてくれたのは沢山のサンドイッチとボトルに入ったコーンスープです。これは嬉しいですね。ちょうどおなかが空いていたのですよ。
「おはよう アリスちゃん もう少し音量下げてもらえるかな。徹夜明けの頭に響くのよ。でもありがとうね。こんなに朝早くからサンドイッチ作ってくれるなんて嬉しいわ。一体何時に起きたのよ」
そうですね。早朝から何かをしていて眠れなくなってそのまま出てきたみたいですね。何をしていたのですか。
「えっとですね。深夜アニメをリアタイしていたのですよ。おかげでテンションMAXですっ」
あなたはいつもテンションMAXな気がいたしますよ。
ところでアリスさん 昨夜、外部からリモート接続していましたよね。じゅうななさいにもなればソースを見れば誰がコーディングしたのかくらいは見分けがつきますよ。優しい嘘をつく子です。ナデナデしてあげましょう。助かりましたよ。ありがとうございます。
「ところで昨日差し入れで頂いたシュークリームが三つ残っているはずだったんだけど無くなっちゃったのよ。なにか知ってるかな」
そう言えば夕方には消えていましたよ。不思議ですね。誰かがおやつに食べてしまったのでしょう。三つも食べたらおデブになってしまいますよ。
「雪せんぱい 『天使のわけまえ』って知ってますか。優しい天使に感謝する考えなんですよ。素敵だと思いませんか」
その話題は出たばかりですよ。天使さんはウイスキーをもらって行くみたいですよ。シュークリームではないようです。
「きっとシュークリームが大好きな妖精さんですよ。大目に見てあげましょうよ。ねっ ねっ」
「妖精さんのおかげで助かったから大目に見ましょうか。それよりアリスちゃんが作ってくれたサンドイッチをありがたく頂きましょう」
それでは妖精さんとアリスさんに感謝して頂きます。美味しいですね。
「雪せんぱい 妖精さんはプリンも好きらしいですよ。用意しておくと良いことありますよ。きっと」
「じゅうななさい」とシュークリーム好きな妖精さん 音無 雪 @kumadoor
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