人形少女の話をしよう──。

薄暗い部屋の一角に、揺り椅子に座って船を漕いでいたんだ。青白いカーテンの隙間からはしんしんと降り積もる粉砂糖のような雪が見えてね。わたしはいつのまにかぬるくなってしまったミルクを口に含んで思うんだ。ミルクは苦かったか?とね。カップを覗いてみれば、淹れてあったのはコーヒーだったのサ。あぁ、たまには大人の味わいをたのしもうと、それに変えていたことすら忘れてしまってね。けれど不思議なことに、まぁもう1杯、もう1杯飲もうじゃないかと、ついつい口を付けてしまうんだ。
あぁ!なんてもったいない!
この苦くも甘い、あまりにも繊細な味わいの物語を読み終えてしまう日がくるなんて!
わたしは空になったカップを傍目に、頬杖をついてその余韻に浸るんだ。
まさにこれは、多く語るまでもない。
美しい物語なのだと──。

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