矢本 凜子

 矢本 凜子は視力が悪い。子どもの時からずっと弱視気味でメガネなしの生活は考えられない。


 でも、メガネ、嫌なんだもん。


 凜子は顔立ちがキツめで目が細く一重なためにメガネをかけるとものすごく秀才顔になる。それがコンプレックスだった。小学生の頃、男の子に「PTAオバサン」と揶揄われたことが心の傷になっている。


 なので裸眼だと危ないと何度注意されても、勉強中以外ガンとしてメガネをかけようとしなかった。


 そんな凜子が羨ましく思っているのは、クラスメイトの立花 美和だった。


 柔らかくふっくらとした頬、細くふわふわとした癖っ毛の持ち主だ。くるんとした二重の大きな彼女の瞳は榛色で、凜子と同じように目が悪くてメガネをかけているのにそのメガネ姿が可愛いのだ。


 私もこんな真っ黒な目じゃなくて、美和ちゃんみたいな茶色で二重の可愛い目だったらよかったのに。


 いいなぁ、あこがれるなぁ。

 

 凜子はまぶたを二重にするシールを買うかどうかで悩みながら美和の瞳を思い出していた。

 


 

 

 




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

KAC20252 あこがれ 小烏 つむぎ @9875hh564

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説