第7話
バケツにはひとまず蓋をして、庭に出した。
「あ、ミサさんに貰ったお
希美が気がついて、貰った塩を四方に盛り、バケツに水をかけ、蓋にお札を貼った。
「明日、ミサさんに聞いてみる」
「そうね」
私達は寝室に戻った。全然眠れそうになかったけれど。
ミサさんは、スエノさんに場所を聞いて、その祠に、二人のスマホを持っていきましょうと提案した。
希美と麻里子に、私と麻里子の母親がついて行く。スマホは、水を入れた瓶の中に入れ、固く蓋をして接着剤で止め、布を巻きつけ、テープでぐるぐる巻きにして簡単には開かなくし、お札を貼ってある。それを持って、スエノさんの言う山へと入った。
祠は、山の中腹、少し広くなっている場所に、ポツンとあった。小さな祠だった。枯れ葉に隠され、苔むしていた。
ミサさんは、その中に瓶を入れ、塩や水、酒と供え物をし、何かブツブツ唱える。
私たちは何をすべきかもわからず、ただ、その様子を眺めていた。
「取り敢えず、これで大丈夫だと思います。戻りましょう」
ミサさんがそう言って、祠を後にした。
山から降りたあと、ミサさんの車の中で、希美が思い出したように、
「そう言えば、ママが持ってた写真も、ゴミ箱から削除できてないかも!!」
と言い出し、大騒ぎになった。
が、私のスマホのゴミ箱に残されていた写真には、一番最初の腕組みをする人も消えて、テーブルと椅子が写っているだけになっていた。
「こ、これはこれで怖いね」
「だね」
希美と麻里子が顔を見合わせる。
私は、彼女たちの前で、それを削除した。
ホッとした顔で、皆で笑い合う。
「それにしても、マコが
「え? 希美が家電にかけてくれたから、あの画像、あわてて削除しようとして開いたんだよ?」
「えっ? かけてないよ?」
「えっ? あたしもかけてないよ?」
ゾッとした。
あの電話は、二人のどちらからでもない。
あの画像を開かせるためのものだったのだ。
あの画面から出てきて、祐也や光輝を引きずり込んでいこうとしていたのかもしれない。
とにかく、あの姿が、写真から消えていたことで、あの、「祠の主」は、消えてしまったのだと確信した。
こうして、日常が戻った。
希美は、思いがけず新しいスマホを買ってもらってご機嫌だ。麻里子とお揃いの、色違いのにしたと言っていた。もっとも、私には、スマホの種類なんかわからないのだけれど。
祐也も、元気に学校に行っている。毎日、少年野球クラブにも参加していて、帰りが遅くなるときは迎えに行くので、連絡するように言ってある。
とても怖い経験だったけれど、あれから、家族の絆は一層強くなったような気がしていた。
◇ ◇
「新米が倍値近くなりそうなんだって」
あれから18年が経った今年。
帰省してきた娘からそんな噂を聞く。
「いくらなんでも、倍はないわよ〜」
私は笑い飛ばした。
今年は、とんでもない米不足で、店頭から米がなくなり、新米が出るまで、なるべくなるべく米を使わずにやりくりしていたのだが。
まあ、新米が出れば、米は買えるじゃない。少々高くても言ってられない。と思っていた。
「去年は米が凶作だったじゃない? 雨が降らなかったり、気温がとんでもなく高かったり低かったりでさ。だから、米が不足してるのはわかるのよね。だけど、もうすぐ新米出るっていうから、期待してたらさ、倍の値段もするっていうんだもの。どういうことなんだろ?」
「そうねえ、今年は雨も降ってたし、気候もそこそこ安定していたし、農家の人は、米は十分できてるよ、って言ってたわよ? いくらなんでも倍値はないんじゃない?」
「うちなんか小4に小6の男の子二人よ〜。食費がホントに馬鹿にならないのに〜。
「祐也も、大食いになったの、野球やるようになってからだもんね。あの子も沢山食べてたわねえ」
そこまで話して、ふと思い出した。
米が凶作だった翌年には、祠の主に祈って……。
いや、あれは昔の話だ。
もう終わったことだ。
と、自分の中で打ち消す。
ふと、ついていたテレビに目をやった希美が、驚いたように、
「ね、ねえ!! ママ!!」
私を大声で呼ぶ。
「これ……」
娘は、テレビのニュースを指さした。
私はそれを見て、愕然とした。
隣町で、10歳の男の子が、失踪していた。
「希美!!
「二人して、コンビニにアイスを買いに……」
―― みいつけた。
〈了〉
みいつけた 緋雪 @hiyuki0714
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