第6話
プルルル、プルルル、プルルル、プルルル……
家の電話の着信音は止まらない。
「ま、間違い電話かもしれないしね、ちょっと取るね」
私は怖々、電話に出た。
「も、もしもし……」
相手は名乗りもせずに、口早に話す。
「ゴミ箱を見て! 写真が残ってるかもしれない!」
「ゴミ箱? え? 麻里子ちゃん?」
「マコ? マコからなの? ママ、代わって!」
「希美? あのね、希美のスマホだと、アルバムの方で削除した写真、まだ、ゴミ箱の方に残ってるかもしれない! それを消してしまわないと、本当に削除したことにはならないの!」
麻里子が焦ったように言っているのが電話越しに聞こえる。
「そうだ……そうだよ、マコ! 気付いてくれてありがとう!」
「夜中にごめん、気付いたら、どうしても電話しておかなくちゃって! やり方わかる?」
「うん。今やってる」
「じゃ、切るね」
「ありがと!!」
希美がスマホの中のゴミ箱を開くと、例の写真が入っていた。
こちらに手を伸ばし、何かを掴もうとしている。
削除ボタンに希美が指を掛けかけた時だった。
中に写っている「何か」が動く。そして、顔が半分現れ、ギョロッとした目が、こちらを覗いた。
「キャーッ!!」
希美がスマホを放り出す。
その画面から、ガサッと音がして、長い爪の赤黒い手が現れた。
「みいつけた」
という低く不気味に響く声とともに。
「祐也! 部屋に隠れて!」
希美は叫ぶと、持っていた懐中電灯で、スマホを壊そうとする。が、力が足りていない。すぐに懐中電灯は取られてしまった。
「希美、離れろ!」
夫がそう言うと、祐也のバットでスマホを殴り、壊そうとする。手は一旦隠れたが、
「ちくしょう! 画面が消えない!」
私は、ハッと気付くと、洗面所に走る。
同じことを考えていたのか、向こうから、水を入れたバケツを持って、希美が走ってきた。
「パパ!! 早く、ここに!!」
ドボン!! バシャッ、バシャッ、バシャ……
水の中に放り込むと、音がしなくなり、スマホの画面も消えた。
と、祐也の部屋の電気がついた。
つけてみると、廊下も、リビングも、全部、何事もなかったかのように、つく。
「こいつのせいだったのか……」
夫が、忌々しそうに、スマホが入ったバケツを見る。
「怖かったね、大丈夫。もう大丈夫だから」
部屋の中では、私にしがみついて震えながら泣いている祐也。
ふと、希美が、
「マコ、大丈夫かな? 電話しなくちゃ……」
と言って、気がついた。
「マコ、なんで
みんな、黙った。
変な汗が私の頬をつたう。
スマホで、かけてこられない理由があったのか?
「マコに、マコに電話しなきゃ、ママ!!」
「麻里子ちゃんの番号なんて知らないわよ!」
「違う! マコのママの電話!」
「あ……」
こんな夜中に大丈夫だろうか?
でも、麻里子の弟、光輝の命が掛かっていることだ。
私は、麻里子の母親に電話をかけた。
「夜分すみません……麻里子ちゃんいらっしゃいますか……」
そう言うと、
「ああ……! そちらも大変でしたね! うちも今……」
麻里子の母親は、涙声で叫ぶように言った。
「希美と代わります。麻里子ちゃんと話せますか?」
「今、代わります。麻里子、希美ちゃんから」
「希美?! 希美! 希美!」
「マコ?! マコもだったの? 大丈夫?!」
「もう……大丈夫……」
「どうやったの?」
「金魚の水槽に沈めた……」
希美が泣いている。きっと麻里子もそうなのだろう。
「ねえ……これ、どうすればいいのかな……」
希美が、バケツを見ながら、言った。
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