なんとも言えない閉塞感が、ひしひしと迫ってくる作品でした。
主人公の彼は、ある夏の日に住宅の内見に出かける。その途中で「家庭の事情」にありありと想いを馳せさせられることになり、たまらなくなって号泣することに。
彼の過去に何があったのか。彼は隣にいた不動産屋の吉田に対し、かつて自分が起こしてしまった「ある事件」についての顛末を語る。
救いのない境遇。彼自身が悪だったわけではない。しかし、「過去」は彼の人生に大きな傷を作り出し、家族関係にも亀裂を入れている。
「魚になりたい」と強く願うようになる彼。人の世で生きることこそが息苦しく感じられ、自分はそこにいるべき存在ではないと考える。そうやってどうにか心の平衡を保っていた。
限界まで追い詰められ、精神的なボーダーラインの上にあった彼。自分は人なのか魚なのか。心を苛まれ続け、迷妄とした状態に囚われている彼の気持ちがひしひしと伝わってきて、強烈に心に迫ってくる作品です。