不幸な人生高価買取します

『あなたの人生不幸な程高価買取！　十分無料査定』

こんな文言に釣られ入店した。

「ありがとうございます。天然物は希少でして」

実体験は天然で、作り話は養殖らしい。

とりま店主にIDカードを渡す。

「放置子、いじめ、恋人の裏切り、破産……素晴らしい。スコアにして九十、掘出物ですね」

「すごいんですか？」

店主が見積もりを渡す。

提示金額千八百万が物語っていた。手が震える。

「売ると記憶が消えたり？」

「いいえ。複製ですので」

むしろ消したいのだが、売ることにした。

「一体誰が買い求めるのだ？」

「芸術関連の方々がネタ元に購入されます。最近はセレブも多いですね」

きっと怖いもの見たさだ。反吐が出る。

金が振り込まれると一ランク上がった気がした。何かは解らないが。

「どうでしょう、お客さんも一つ」

「……私より最低な人生があれば読ませてください」

店主はニタリと笑う。

「みなさんそうおっしゃいます」