誰もいない放課後の教室。
物語が好きな主人公は、本に書いてあったことを試そうとしていました。
ふと溢れ出した彼の思いは唐突に起きた事態で断ち切られます。
思いは報われませんでした。
すべては無くなってしまいそうでした。
図書館で、あの人の言葉を聞くまでは。
物語は求める者がある限り、新たな物語をつれてきます。
人の未来もそうであるように。
物語の扉はきっと開かれる。
新しい頁はきっとある。
この物語を読む方は、そう信じられることでしょう。
切なくも瑞々しい感性にあふれた作品です。
目にした方は、ずっと心に残る。
そんな物語となることでしょう。
「放課後」という時間はやっぱり特別だ、と改めて思わされました。
主人公の少年は、とある放課後の時間、片思いをしている同級生の席にそっと座る。彼へのひそかな想いをそこで味わうが、当の本人が戻ってきてしまい、何をしていたのかと怒られる。
咄嗟に「好きだ」と気持ちを伝えるが、彼からは拒絶の態度を示されて。
ひそかな想いに浸る、誰もいない放課後の教室。
思春期のたおやかさ、教室の静謐感。そういった様々なものが読んでいて自然と脳裏に去来していきます。
その後に彼が遭遇する、居心地の悪さ。そんな中で救いを求める図書室。
孤独と、ささやかな救いと。それでも「続き」を信じたくなる心と。
繊細な心情がしみじみと伝わってきて、自然と感情移入させられることになります。
短い中でも感情が様々に揺れ動いて行く様子が丹念に描き出されていて、読む人の心に確実に「何か」を残してくれる作品です。