誰にも言えない気持ちは、ページの向こうに

 誰にも言えない思いを抱えて、本の中に逃げ込む少年の姿に、かつての自分を重ねる人も多いのではないでしょうか。ほんの一瞬の出来事が心に深く刻まれ、世界の見え方が変わってしまう、そのやるせなさと愛おしさが、瑞々しい言葉で描かれています。

 図書室、本の扉、やさしくかけられた言葉……その一つ一つが胸に染みわたり、まるで雨上がりの空気のように透明で、少し切ない雰囲気が混ざりあって包み込んでくれます。
 
 静かで繊細な感情の波が、まるでページの隙間からそっと滲み出してくるような物語でした。

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